AI囲碁で棋力はあがる?定石を学べる仕組みと最強AI囲碁の条件

AI囲碁のアプリを利用すれば、いつでも対局ができ自分の棋力が正確に把握できるのではないか。そして、棋力も向上するのではないか。

この記事をご覧になっている方は、このように期待している方もいることでしょう。近年、AIの進歩は目覚ましく、AI囲碁においても、その実力はプロの囲碁棋士をも凌駕するまでになっています。

AI囲碁はなぜそんなに強いのか? 定石も学べるならその仕組はどうなっているのか?

この記事は囲碁の愛好家でAIにも興味がある、そして日々、棋力をあげたいと願っているあなたに向けて書いています。

目次

AI囲碁の仕組み

この章では、AI囲碁の仕組みについて説明します。まずAIと囲碁の歴史、AIがどのように囲碁を学習するのか、そしてその中心にあるディープラーニングについて、基本的な情報を見ていきましょう。

AIと囲碁の関連性

AIと囲碁の歴史は20世紀の後半から始まりました。

初期のAI囲碁は、数値評価と呼ばれる簡単なシステムを用い、可能な全ての手から最善の手を選び出すという基本的な原則に基づいていました。しかし、この方法では囲碁の複雑性と可能な手の多さから、あまり高度な技能を発揮することはできませんでした。

しかし、21世紀になると新たな技術の登場とともに、AI囲碁は劇的な進化を遂げます。新たなテクノロジー「ディープラーニング」との融合です。

AIの囲碁の学習法

AIが囲碁を学習するためには、まず人間の対局データが必要となります。

AIはこのデータを利用して、どのような局面でどの手を打つのが良いのか、または良くないのかを学びます。これがAIが囲碁を理解するための第一歩です。

ただし、人間のデータから学習するだけではAIの能力は人間と同等に留まります。それを超えるために、AIは自身と何百万回も対局を繰り返し、その結果から新たな知識を獲得します。

このプロセスにより、AIは人間が見落とす微細な手筋や新しい定石を発見します。AIの優れた能力の根幹は、膨大な対局データから学習しているのです。このようなデータのことを、AIの領域では「学習データ」と呼ばれています。

学習データは、AI全般で使われる概念であり、AI囲碁に限ったものではありません。近年、話題になっている生成AI、たとえば「ChatGPT」でも学習データ(学習モデル)が使われています。

ディープラーニングと囲碁

AIが囲碁を学習する際に重要な役割を果たすのがディープラーニングです。ディープラーニングは深層学習とも呼ばれており、人間の脳の神経ネットワークを模倣した技術です。

大量のデータを解析し、パターンを見つけるのに非常に優れています。ディープラーニングの能力により、AIは多くの対局データから高度な戦略やパターンを学び、それを実際の対局に適用することができます。

ディープラーニングのテクノロジーによって、AIは人間が達成できないような高度な理解と戦略を得ることができ、これがAI囲碁の強さの根幹になっています。

人間であれば、何万回も自分自身と対局することはできません。また、大量の対局実績から正確にパターンを見つけることもできません。この点において、AIは人間よりも圧倒的な優位性を持っています。

AI囲碁ソフトウェアの基本

では、AIのテクノロジーは実際にどのようにAI囲碁に搭載されているのでしょうか。

AI囲碁のソフトウェア製作は、テクノロジーとエンターテインメントが混じり合ったようなものです。厳密なルールに基づきながらも、創造的な試行錯誤が必要とされます。

AI囲碁の構造

AI囲碁ソフトウェアは主に2つの部分から構成されています。「ゲームエンジン」と「AIモデル」です。

ゲームエンジンは、ソフトウェアの「骨格」のようなもので、囲碁のルールを実装し、対局の進行を管理します。一方、AIモデルはソフトウェアの「脳」で、次にどのような手を打つかを決定します。

ゲームエンジンは、現在の碁盤の状況(石の配置)をAIモデルに提供します。そしてモデルはその情報をもとに、すべての可能な手から最適な手を選び出します。この選択プロセスは、人間が一手を読むのに似ていますが、AIは一度に多くの手を評価する能力を持っています。

コンピューターの計算速度が人間よりも遥かに早いことは既知の事実のため、イメージもしやすいのではないでしょうか。

AI囲碁と学習モデル

AIモデルは大量の囲碁対局データを使用して訓練されます。これらのデータは、過去の対局やプロ棋士の解説などから集められます。訓練の過程で、AIは何千、何万回も対局を行い、勝つための戦略を自己学習します。

訓練が完了したモデルは性能評価されます。評価の方法としては、他のAIプレーヤーや人間のプレーヤーと対局させるなどがあります。この評価段階により、モデルの強さや弱点が明らかになります。

これらのプロセスを通じて、AI囲碁ソフトウェアは絶えず進化し続けます。新たな戦略を学び、より強く、より賢くなるために、AIは継続的な訓練と評価をくり返すのです。

この点においても、AIは人間に比べて有利な立場を持っています。人間の脳の限界を超えて、膨大な数の局面を高速に評価し、パターン解析できる能力を持っているからです。

AIテクノロジーと定石の相性

定石とは、何世紀にもわたる囲碁の歴史の中でくり返し確認され、最善とされる一手のことを指します。そして、AIが最も得意とするパターン解析は定石の概念と極めて相性がよいという特徴があります。

AIはどのように定石を学ぶのか

AIは大量の囲碁データを解析し、その中に存在するパターンを学習します。この学習過程において、古典的な定石は頻繁に現れるパターンとしてAIに認識されます。

ディープラーニングという技術を用いることで、AIは何千、何万もの局面に対する最適な手を抽出し、それによって定石を自己学習します。

AIと既知の定石の一致度

AIは数千、数万の局面から勝率を最大化する手を選び出します。一般的には、AIの手順と人間の定石は高い一致率を示すことが多いです。

しかし、AIが定石を選ぶのは、それが人間によって定石とされているからではなく、AIが自己学習によりその手が最適だと判断したからです。その結果、人間が長年にわたり築き上げてきた定石と一致する場合もあれば、逆に従来の定石を覆すような手を選ぶこともあります。

ここは非常に関心深い説明ではないでしょうか。AIは、人間が決めた定石を学んでいるのではなく、対局データから定石を自己発見しているのです。

AI囲碁が生み出す新しい定石

AIの囲碁の最も興味深い側面は、AIが大量のデータからパターン解析を行うことによって、これまで人間が気付かなかった新しい定石を見つけ出す可能性がある点です。

そのような新たな定石の発見は、まさにAIの為せる技であり、囲碁の戦略を再定義する可能性すら秘めています。事実、現代の囲碁界では、AIが生成した新しい定石がプロの棋士によって評価され、新たな戦略として採用され始めています。

AI囲碁を使った棋力向上

AI囲碁ソフトウェアはただの対局相手としてだけではなく、囲碁愛好家にとっての学習ツールとしても優れています。

その特性を理解し適切に活用することで、ユーザー自身の囲碁の理解や棋力を大いに向上させることが可能です。この章では、AI囲碁のレベル調整機能、自己対局を通じた学習法、そして分析機能の活用法について見てみましょう。

AI囲碁のレベル調整機能

多くのAI囲碁ソフトウェアにはレベル調整機能があります。これは、AIの強さをユーザーの棋力に合わせて調整する機能です。

初心者は初心者向けのレベルから始め、徐々にレベルを上げていくことで、自然と棋力を向上させることができます。高度なレベルでは、AIはプロ棋士と同等、またはそれ以上の能力を発揮しますので、挑戦することでさらにスキルを磨くことが可能です。

自己対局での学習法

自己対局とは、AIが自分自身と対局する機能のことです。これは新たな局面や戦略を見つけるのにとても学習効果が高いです。

自己対局を見ることで、高い棋力を持ったAIがどのように定石を採用し、新たな局面を作り出すかを学習することができます。また、AIの自己対局のログを見て、その中で起きた意外な手順や戦略を学ぶこともできます。

分析機能の活用法

多くのAI囲碁ソフトウェアは強力な分析機能を備えています。これにより、対局後に自分の手順をAIがどう評価したかを確認することができます。

また、それぞれの手が勝率にどのように影響を及ぼしたか、どの手が勝利に繋がる可能性が高いかという情報も得られます。この機能を活用することで、自分の強みや弱点を把握し、具体的な改善策を立てることが可能になります。

最強AI囲碁の条件

優れたAI囲碁ソフトウェアの条件は多岐にわたります。その中でも、特に重要な3つの要素があります。「大量の対局データ」「高品質な対局データ」そして「最新の対局データ」です。これらは最強のAI囲碁ソフトウェアを生むための重要な要素です。

対局データの量

AIは学習というプロセスを通じて能力を向上させます。この学習の過程でAIは多数のゲームをプレイし、それぞれの対局から得たデータを基に経験を積みます。

よって、学習に使用される対局データの量は、AIの能力に直結します。多岐にわたる局面や戦略を網羅的に学ぶためには、大量のデータが不可欠です。

対局データの質

AIの性能は対局データの質にも大きく依存します。特にプロの棋士や先進的なAIによる質の高い対局データは、AIにとって最も価値のある学習材料となります。高度な戦略を習得し、深い局面理解を身につけるためには、高品質なデータが必要となるのです。

対局データの最新性

囲碁は進化し続けるゲームであり、戦略や手法は時代と共に変わることがあります。そのため、最新の対局データを利用することで、AIはその時々のトレンドや新しい戦略を理解し、それに対応する能力を身につけることができます。


これらの要素を兼ね備えたAI囲碁ソフトウェアは、対局相手としても棋力向上のツールとしても、特に優れています。最強AI囲碁は、3つの要素を高い水準でクリアしていることが最低条件です。

アルファ囲碁の誕生と影響

ディープマインド社(DeepMind)が開発したこの「アルファ囲碁」は、その驚異的な力で世界を震撼させました。アルファ囲碁の登場は、AIと囲碁の歴史にとって、1つのターニングポイントと言えるでしょう。

アルファ囲碁の特徴

アルファ囲碁は、他のAI囲碁とは一線を画す特徴を持っています。それは「自己対局」による学習です。

アルファ囲碁は最初に、基本的な囲碁のルールだけを与えられます。その後は自分自身との対局を通じて、ゼロから囲碁の戦略を学んでいきます。

この「強化学習」と呼ばれるアプローチにより、アルファ囲碁は一人前のプレーヤーから頂点に立つまでのスキルを短期間で獲得しました。その学習速度と能力は、AIの可能性を世界中に知らしめたのです。

アルファ囲碁の影響

アルファ囲碁の登場は、囲碁界に大きな波紋を広げました。その理由の1つは、アルファ囲碁が世界のトップ棋士たちを破ったことにあります。AIが人間のトッププロを破るという事態は、それまでの囲碁界では予想外の出来事でした。

さらに、アルファ囲碁は人間がまだ認識していなかった新たな戦略や定石を見つけ出すことで、囲碁の戦略そのものに影響を与えました。アルファ囲碁のプレイは、人間の棋士や愛好家たちに新たな視点を提供し、囲碁の理解をより深めるきっかけとなったのです。


このように、アルファ囲碁の誕生はAIの可能性を大きく広げただけでなく、囲碁界とAIの融合をもたらしたのです。AIは社会のさまざまな分野で活用されることも証明しました。

あとがき

今回は、当サイトの専門分野である「テクノロジー」と、コアな愛好家を持つエンターテインメント「囲碁」をテーマに記事を書きました

人間の緻密な思考や複雑な戦略にAIがどのように挑み、そして優れたAI囲碁が誕生したのか、というストーリーをご理解いただけたことと思います。そして、この記事が囲碁だけでなく、AIというテクノロジーへの興味と理解を一層深めるきっかけとなれば幸いです。

また、アルファ囲碁のように、人間の思考を超越するAIの可能性に触れることで、AIの未来がどのような形で私たちの生活や社会に影響を与えるかについて、新たな視点も見えてきたのではないでしょうか。

(囲碁でも自動運転でも、学習データ・パターン解析という概念はAIの共通事項なのです)

囲碁ソフトウェアは単なるゲームではありません。そう、最先端のテクノロジーです。当サイトでは今後も、AIを始めとするテクノロジー関連の情報を継続して発信します。また、ご覧ください。

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