自然言語処理とは(NLP)│【入門】実例を用いて初心者向けに解説

2023年。OpenAIが開発した言語モデルGPT-4が一般リリースされたことに伴い、自然言語処理(NLP)による文章生成が誰にとっても身近な存在となりました。GPT-4を搭載した生成AI「ChatGPT」の誕生が最も大きなきっかけです。

テクノロジーへのご関心が高い方は、すでにChatGPTの性能は実感されていることでしょう。一方で、このような自然言語を扱う高度なAIはChatGPT以前から存在しており、わたし達の身近なサービスで活用されています。

インターネットの情報検索、かな漢字変換、そして文法誤り訂正機能。

誰でも触れたことのあるこれらの機能は、自然言語処理によって実現されたものです。

この記事では、近年、目覚ましく発展を遂げた自然言語処理について、その定義や基礎、できることなど、初心者向けに分かりやすく解説します。

目次

自然言語処理(NLP)とは

自然言語処理(NLP)は、今日のデジタル世界でとても重要な役割を果たしています。Googleで何かを検索するたびに、スマホやパソコンで文字を変換するたびに、AmazonのAlexaに質問するたびに、自然言語処理が裏側で働いています。

自然言語処理とは具体的に何なのでしょうか?それはなぜ重要なのでしょうか?この章で説明します。

自然言語処理の定義

自然言語処理(NLP)は、人間が普段使っている言語、つまり自然言語をコンピュータが理解し、生成し、対話することを可能にする科学の一分野です。

これはAIや機械学習の一部で、文字や音声といった人間の言語をコンピュータが解釈し、それに基づいて行動することを意味します。たとえば、スマートスピーカーに天気を尋ねると、スピーカーは人間の音声をテキストに変換し、そのテキストから意図を理解し、適切な応答を生成します。これはすべて自然言語処理のおかげです。

自然言語とは何か

自然言語とは、わたし達が日常生活で使用する言語のことを意味します。

日本語や英語、スペイン語など、世界には多くの自然言語が存在し、それぞれに独自の文法、単語、発音などのルールがあります。これらの言語は人間が自然に学び、使うものであり、それが「自然言語」と呼ばれる所以です。

一方、コンピュータ言語(プログラミング言語)は、人間がコンピュータとコミュニケーションを取るために設計した言語であり、自然言語とは対照的な存在です。たとえば、JavaやC言語、Pythonなどがコンピュータ言語です。

自然言語処理が必要な理由

自然言語処理がなぜ重要なのでしょうか?その答えは、私たちの社会がますますデジタル化し、情報化する中で、人間とコンピュータとのスムーズなコミュニケーションが不可欠であるからです。

Googleで情報を検索したり、スマートスピーカーに何かを尋ねたりするたびに、自然言語処理はこれらのリクエストを理解し、適切な応答を提供します。また、自然言語処理は感情分析、文章生成、機械翻訳など、さまざまなアプリケーションで活用されています。これらの理由から、自然言語処理は現代社会においてとても重要な技術となっています。

自然言語処理の基礎

この章では、自然言語処理の基本的なフロー、主要なコンポーネント、手法、そしてディーラーニングとの関連性について詳しく見ていきましょう。

自然言語処理の基本的な流れ

自然言語処理は一見複雑に見えるかもしれませんが、基本的な流れは3つのステップに分けられます。

テキストの前処理

まず初めに行うのがテキストの前処理です。

これは料理で言うところの下ごしらえのようなもので、使いやすい形に原材料(テキストデータ)を整える作業です。前処理には、文の分割や単語のトークン化(分割)、ストップワード(意味を持たない単語)の除去などが含まれます。

特徴量抽出

次に、テキストデータから特徴量を抽出します。

これは、料理で言うところの材料の切り方を工夫するようなもので、計算機が理解しやすい形にデータを変換します。この工程では、Bag Of WordsモデルやTF-IDFなどの手法が用いられます。

機械学習モデルの適用

最後に、機械学習モデルが特徴量に適用されます。

これは、料理で言うところの調理法を適用するようなもので、結果を得るための最終ステップです。このステップで、分類、予測、生成などのタスクが行われます。

自然言語処理の主要なコンポーネント

自然言語処理には、コーパスと言語モデルという2つの主要な要素があります。

コーパスとは何か

コーパスは、自然言語処理のための基本的な「材料」です。これは大量のテキストデータの集合で、そのテキストデータがどのように使用されるかによって、特定のタスクを学習するための「教科書」または「レシピ」のような役割を果たします。

言語モデルとは何か

言語モデルは、自然言語処理の「料理人」のようなものです。コーパス(「レシピ」)を使って、単語や文の生成や理解をどのように行うかを学習します。ChatGPTには、GPT-3.5やGPT-4の言語モデルが搭載されています。

ChatGPTが証明するように、自然言語処理のクオリティは搭載されている言語モデルに依存します。

自然言語処理の主要な手法と技術

自然言語処理には、テキストを理解するためのさまざまな手法と技術があります。

品詞タグ付け

品詞タグ付けは、文章中の各単語がどの品詞に該当するかを特定する過程です。これはテキストを解析するための初歩的なステップで、たとえば「走る」は動詞、「速い」は形容詞といったように品詞を特定します。

固有表現抽出

固有表現抽出は、テキストから人名、地名、組織名など特定のカテゴリに属する単語やフレーズを抽出する手法です。この手法によって、テキストが誰や何について話しているのかを把握します。

構文解析

構文解析は、文の構造と関連性を理解するためのプロセスです。これは、文章を「木」の形に分解して、どの単語がどの単語と関連しているかを特定します。

意味解析

意味解析は、単語や文の意味を理解するためのプロセスです。この工程によって、コンピュータは人間が理解するような形でテキストの意味を解釈することが可能になります。

ディープラーニングと自然言語処理

最近の自然言語処理では、ディープラーニングが重要な役割を果たしています。特に単語の埋め込み、リカレントニューラルネットワーク、変換モデルといった手法が注目されています。

単語埋め込み

単語埋め込みは、単語を高次元のベクトルとして表現する手法です。単語間の意味的な関連性を数値的に表現することができます。

リカレントニューラルネットワーク

リカレントニューラルネットワーク(RNN)は、自然言語のような時系列データを扱うための神経ネットワークの一種です。単語の順序や文の構造を理解することができます。

変換モデル(トランスフォーマモデル)

トランスフォーマモデルは、自然言語処理のための最新の手法で、特に文章の生成や翻訳に強い力を発揮します。このモデルは、文全体を一度に理解することで、文脈全体を考慮したより精密な言語理解を可能にします。

自然言語処理でできること

自然言語処理はわたし達の日常生活の中で幅広い役割を果たしています。Googleでの検索からスマホでのかな漢字変換、さらにはAIチャットボットとの会話まで、さまざまな形で存在しています。

この章で、具体的な応用例を紹介します。

情報検索

情報検索は、自然言語処理の最も一般的な応用例の一つです。Google検索を使うとき、入力したキーワードやフレーズを元に、関連性の高いウェブページを探して表示してくれます。これは自然言語処理の技術を用いています。

かな漢字変換

日本語入力の際に、かな入力から正しい漢字に変換される機能も自然言語処理の一部です。たとえば、人間が入力した文脈によって、同じかなでも異なる漢字を提案してくれます。これは、自然言語処理によって、コンピュータが文章を理解しているためです。

文法誤り訂正

文書作成ツールやメールソフトが文法や綴りの誤りを自動的に訂正する機能も自然言語処理の応用例です。この機能によって、タイポや誤字脱字を簡単に発見することができます。

文章翻訳

Google翻訳などの翻訳ツールは、ある言語の文章を他の言語に自動的に翻訳するために自然言語処理を利用しています。自然言語処理が発達した近年では、単語レベルだけでなく、文脈を理解してより自然な翻訳を実現します。また、言語の幅も広がっています。

文章要約

自然言語処理は、長い文章や文書を短く要約することも可能です。これにより、大量の情報を短時間で消化することができます。ニュースキューレーションや論文解釈の分野でも活躍しています。

質問応答システム

「OK Google」や「Alexa」、「siri」のような音声アシスタントは、自然言語処理を使って人間の質問に直接的に応答することが可能です。これらのシステムは、人間が自然に話す言葉を理解し、適切な情報を提供することができます。

ただし、現時点ではChatGPTのような長文かつ複雑な文脈、意図を汲み取るほどのレベルには到達していません。

対話システム

チャットボットやAIアシスタントは、自然言語処理を用いて人間と自然に会話を行うことができます。これらのシステムは、ユーザーの発言を理解し、関連性のある応答を生成することができます。ただし、自社専用のチャットボットを開発する場合には、その企業に特化した学習データを組み込む必要があります。

文章生成

最新の自然言語処理の技術を利用すれば、AIは自己完結型の文章や報告書を生成することが可能です。OpenAIのGPT-4やChatGPTはその例で、与えられた情報に基づいて新しい文章を生成することができます。

これは、2023年のGPT-4のリリースによって、急速に一般化が進んだ分野です。

自然言語処理の入門と学習方法

前章で紹介したように、自然言語処理はさまざまな分野で使われています。

そして、それらを学び理解するには幅広い知識が必要です。この章では、自然言語処理の学習に必要な基礎知識と、初心者に適した学習リソースを紹介します。

自然言語処理を学ぶための基礎知識

自然言語処理を学び始めるには、いくつかの基本的な知識が必要です。これらは自然言語処理のツールとして使われるものであり、これらを理解することで、より深く自然言語処理を学ぶことが可能になります。

プログラミングスキル

自然言語処理の学習には、まず基本的なプログラミングスキルが必要です。特にPythonはそのシンタックスの簡潔さと、豊富なライブラリから、自然言語処理の分野で広く使用されています。

数学の知識(高校〜大学レベル)

自然言語処理では、統計学や線形代数の基本〜応用的な知識が必要となります。これらは、機械学習モデルの背後の理論を理解し、それを最適に動作させるために重要な役割を果たします。

自然言語処理やAI、ディープラーニングの世界では高校〜大学レベルの数学が必須です。また、数学はさまざまなテクノロジーの根幹となる学問です。当サイトの運営者は、将来的に、テクノロジーを視点とした「数学基礎」のサイトを立ち上げる予定ですので、ご活用いただけると幸いです。

2024年後半に開設予定

機械学習の基礎

自然言語処理は、広範にわたる機械学習の技術を用いるため、機械学習の基本的な概念と技術を理解することが重要です。特に、教師あり学習と教師なし学習の基礎を理解することから始めると良いでしょう。

自然言語処理の初心者におすすめの学習リソース

自然言語処理の学習に有用なリソースは数多く存在します。

ここでは、初心者におすすめのリソースを紹介します。各々のリソースからどのような知識が得られ、どのような読者に適しているかを理解することで、自分の学習スタイルと目標に最も適したものを選ぶことができます。

オンラインコース

初心者には、オンラインコースがおすすめです。たとえば、“CourseraのStanford Universityの自然言語処理コース”などがあります。Courseraは、GoogleやMicrosoftのような世界企業、一流大学、そしてテクノロジー業界の研究者が非常に良質なオンライン学習を提供しています。

国内の「プログラミングスクール」よりも、より専門的・本質的な情報を得ることができますので、おすすめです。

書籍

自分のペースで深く学びたい方には、書籍がおすすめです。Amazonでは、レベルや用途(開発・学習)に応じたさまざまな自然言語処理関連の書籍がラインナップされています。

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チュートリアルと実践プロジェクト

具体的なプロジェクトを通じて学びたい方には、チュートリアルや実践プロジェクトがおすすめです。

たとえば、「Kaggle」の自然言語処理関連の競技に参加すると、具体的な問題解決に取り組む中で自然言語処理のスキルを身につけることができます。また、GitHub上には多くのNLPプロジェクトが公開されており、そこから実際のコードを学んだり、自分で貢献することも可能です。これらは、自然言語処理の多くのコンセプトを具体的に理解するのに役立ちます。

その他のリソース

自然言語処理やディープラーニング、AIのような高度なテクノロジーに挑戦する方へはYouTubeのような大衆向けかつ無料のリソースをメインにすることはおすすめしません。それらは、視聴数を主点としたエンターテインメントメディアであり、必然的に大衆寄りの内容になるためです。

それらを視聴して、勉強したつもりになるのは、時間の浪費でしかありません。

価値あるテクノロジーの知識を習得したい方は、有料のリソースから良質な情報を得ましょう。必ず、自身にとっての糧になります。

自然言語処理の未来と課題

自然言語処理(NLP)は、人間の言語を理解し解釈する能力を持つAIの進化にとって、核心部分を担うテクノロジーです。

この進化は、科学者・研究者たちの手による日々の探求と革新の結果ですが、その未来を予見することは困難です。一方で、自然言語処理の発展には課題も存在します。それらは、自然言語処理の未来に関わる重要な要素となります。

わたし達は、自然言語処理の能力の向上によって、その可能性が飛躍的に広がることを目の当たりにしています。言語の微細なニュアンスを理解し、複雑な問題を解決し、人間と自然に対話するAIは、わたし達の思考や学習、そしてコミュニケーションを取る方法などを再定義しつつあります。

自然言語処理がより高度化し、一般生活に浸透した場合、はたして現在の学校教育の内容は必要でしょうか?

自然言語処理の広範な応用可能性は、その影響が社会全体に及ぶことを意味するのです。自然言語処理は情報アクセス、教育、ビジネス、そして日常生活そのものを変える可能性があります。

事実、自然言語処理の進化は新たな課題も引き起こします。たとえば、AIが人間の思考を模倣し、創造性を発揮するにつれて、その使用に関する倫理的な問題が生じるでしょう。また、自然言語処理の限界、特に機械が人間のように世界を理解することの困難さも重要な課題です。

自然言語処理の未来は、人類にとって非常に興味深くワクワクする一方で、幾多の課題も抱えているのです。だからこそ、テクノロジーには多くの人を魅了する魔力があるのですね。

あとがき

今回は、ChatGPTによって急速に一般化した自然言語処理について、その定義と基礎、現在の社会における活用例や未来について記事にしました。

ChatGPTは、その高度な性能から世界的な注目を集めましたが、その影響はひとつのサービスに留まるものではありません。つまり、ChatGPTをきっかけに自然言語処理やAIは飛躍的な進化を遂げるのです。

これから、世界のテック企業はAIへの投資額、スピードを高めて、人々の想像を超えたサービスを開発しリリースするでしょう。間違いなく、テック企業のAI覇権争いは始まっています。

テクノロジーに関する良質な情報を絶えず収集し、新しい世界へ参加しましょう。行動を起こすことで「何かが始まる」のです。

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