日本でも必修化されたプログラミング教育。
日本は、国際競争力の調査結果が示しているように世界におけるデジタル力は高くありません。では、世界のデジタル競争力で日本よりもうえを行く諸外国では、小学校から中学校の学年レベルで、どのようなプログラミング教育をしているのでしょうか。
この記事では、平成26年度、文部科学省の委託を受けて実施された調査の報告書を基に、海外のプログラミング教育の内容を紹介します。
2021_デジタル競争力ランキング
<プログラミングの重要性>
今回のテーマは海外のプログラミング教育だ!
TOP20(2021年調査)
ランキング | 国名 |
---|---|
1位 | アメリカ合衆国 |
2位 | 香港 |
3位 | スウェーデン |
4位 | デンマーク |
5位 | シンガポール |
6位 | スイス |
7位 | オランダ |
8位 | 台湾 |
9位 | ノルウェー |
10位 | アラブ首長国連邦 |
11位 | フィンランド |
12位 | 韓国 |
13位 | カナダ |
14位 | イギリス |
15位 | 中国 |
16位 | オーストリア |
17位 | イスラエル |
18位 | ドイツ |
19位 | アイルランド |
20位 | オーストラリア |
日本は64か国の中で28位だ!
表内の青蛍光ペン箇所は、次章でプログラミング教育の内容を紹介している国です。
海外のプログラミング教育
この章で紹介する海外のプログラミング教育は、文部科学省の委託を受けて実施された下記調査報告書を基にしています。
「諸外国におけるプログラミング教育に関する調査研究」・・大日本印刷株式会社
前章、デジタル競争力ランキングで上位の国についてのプログラミング教育を紹介します。下記、国名のあとにカッコ書きで書いているのは、ランキングの順位(2021年)です。
各国のプログラミング学習を紹介するうえで、「Scratch」という学習用ツールが何度も登場しますが、Scratchは日本でも使える小学生・中学生向けのプログラミング学習ツールです。詳細は、後日、当サイトでも紹介します。
※その他、「LightBot」という学習用アプリも登場しますが、同様に後日、別記事で紹介します。
米国(1位)
※調査対象はカリフォルニア州となっています。
前章のデジタル競争力ランキングでトップ、かつGAFAに代表されるIT企業が密集するシリコンバレーを有しているカリフォルニア州ですが、意外なことに、プログラミング教育は学校裁量となっており、基本科目にプログラミングは規定されていません。
香港(2位)
香港では、中学校からプログラミング学習が必修化されています。ただし、細分化された科目のうち、すべてが必修という訳ではなく、多くは選択制となっいますが、実態として選択される割合が低いという課題を抱えているようです。
ただし、政府が推奨している内容では、具体的なプログラミング言語も明示されていて、本格的なプログラミング学習に対する意識は持っているようです。
スウェーデン(3位)
現在の日本に近い教育カリキュラムで、情報端末の活用は小学校から取り入れられているものの、プログラミング教育は導入されていません。
シンガポール(5位)
シンガポールでは早くから情報通信産業を国の機関産業と位置付け、教育分野にITインフラを導入しています。そして、情報端末の活用も学校現場での利用が進められているものの、プログラミング教育は導入されていません。
台湾(8位)
台湾の義務教育制度は、日本に近い小学校6年・中学校3年間の教育期間になっていおり、「国民中小学九年一貫過程綱要」が存在していて、「情報」や「自然と生活の科学技術」が独立した教科として定められています。
ただし、「情報」や「自然と生活の科学技術」はそれぞれ必修科目ではなく、各学校の裁量に任されています。強制力はないものの、小学校3年生から中学校3年生までの一貫カリキュラムで「プログラミング言語の基本概念とその機能の理解」という項目が含まれています。
また、台湾は『情報モラル』に関する教育に重点を置いていて、インターネット利用時のマナーやスパム防止、ネットいじめ防止、依存症防止などを強化する教育が推奨されています。
フィンランド(11位)
フィンランドでは、2016年からプログラミングを義務教育に含めているようです。
プログラミング教育は、1年から9年生(小学校および中学校相当)の算数・数学の一部として導入され、3年から6年生ではScratchを使ったプログラミング学習に取り組んでいます。
7年から9年生にかけて、本格的にプログラミング言語を用いた学習をしているようです。
※学習するプログラミング言語の種類は、不明です。
韓国(12位)
韓国では、比較的早くから情報教育の必要性が主張されていて、初・中学校への導入は1987年に遡ります。情報端末の活用とプログラミング学習、どちらに比重を置くかについては何度か変革期はあったものの、2007年から本格的にプログラミング学習が始まっています。
現在では、中学生でプログラミング言語の概念やScratchを使った学習、高校生からは「Python」などを使った本格的なプログラミング学習が行われています。
カナダ(13位)
※調査対象はカリフォルニア州となっています。
カナダの義務教育期間は、1年から12年生までの12年間となっており、日本の小学生~高校生に相当します。「Computer Studies」は10年から、つまり日本の高校生に相当する学年から選択科目として導入されています。
基本的なプログラミングの概念から、簡単なプログラミングの記述まで。さらに11年から12年生で選択するコースによっては、12年生でオブジェクト指向まで学習します。
なお、初等教育向けのプログラミング学習に関しては、「Canada Learners Coding」や「KIDS Learning Code」等の団体が、6歳から17歳向けにワークショップやキャンプ等を実施して、Scratchを使ったプログラミングを教えています。
英国(14位)
※調査対象はイングランドとなっています。
英国では、2013年まで情報端末の活用を学ぶ教科を義務教育すべての学年で実施していましたが、2010年頃に情報科目の在り方について見直しがされました。これは、特に産業界からの声が強かったそうです。
その後、2014年からはこれまでの情報端末の活用にかわり「Computing」の教科が実施されることになりました。「Computing」の教科では、アルゴリズムやコンピューターの原理などの本格的なプログラミング学習が行われています。
教材としては、LightBotやScratchなどが使われています。
イスラエル(17位)
イスラエルでは、日本の高校生に相当する学年より「Computer Science」と呼ばれるプログラミング学習が取り入れられています。
小学生や中学生では、特に情報科目は取り入れられていませんが、「Computer Science」ではプログラミング的思考を育成するためのアルゴリズムが重視されており、このカリキュラムは世界で最も厳格とされています。
なお、当サイトも小学生・中学生のプログラミング学習をテーマにしていますが、根底はプログラミング的思考であり、特に小学生には、フローチャート(アルゴリズム)を用いた学習を推奨しています。プログラム学習の考え方として、イスラエルの教育方針には強く同意します。
ドイツ(18位)
現在の日本に近い教育カリキュラムで、情報端末の活用は後期中等教育の段階で取り入れられているものの、プログラミング教育は導入されていないようです。
ただし、ドイツの教育体制は全16連邦州それぞれが独立して教育方針を決定するため、州による違いは大きいようです。
あとがき(日本について)
海外のプログラミング教育も様々なのね!
そうだ!そして、本質的な教育をしている国はまだ少ない!
プログラミングは、教育の観点では標準化されていない分野なのだ!
今回は、2021年に日本でGIGAスクール構想が始まったことに伴い、海外のプログラミング教育・学習の状況を記事にしてみました。本調査は、平成26年時点のものであり、状況が変化した国もあるかと思いますが、ご参考になれば幸いです。
日本のGIGAスクール構想も、わたしが調べた限りでは「情報端末の活用」に留まっており、もう一段の掘り下げを期待したいところですが、海外の教育・学習もそれほど、プログラミング学習に特化した内容が実施されている訳ではないようです。
学校教育の場合、やはり教師にもデジタル・プログラミングの知識を標準化する必要があるため、まだまだ時間が必要なようです。
これからのGIGAスクール構想・プログラミング必修化の動きに注目したいと思います。
プログラミングの重要性を1人でも多くの親に伝えるのが、このサイトの役目だ!