メディア運営者にとって、年に数回実施されるGoogleのコアアップデートは、注目すべき大きなイベントです。コアアップデートは、企業であれば売上、個人にとってはブログ運営の継続にも関わるほどの緊迫感を与えます。
2023年10月、Googleはこれまでに類を見ないほどの変動を伴うコアアップデートを実施しました。
SNSの「X」を見る限り、個人運営のメディアサイトはPVを大きく減少させ、落胆の声が目立っています。
当サイト独自の見解ですが、今回のコアアップデートは今後のインターネット検索を大きく左右する、Googleの真意が隠れているように感じます。
この背景には、近年のテクノロジーの進歩が大きく影響しています。
ある程度のメディア運営歴を持っているのであれば、知らない方はいないでしょう。「コアアップデート」とはインターネット検索結果の「最適化」を実現するためアルゴリズムの調整です。
世界には、いくつかの検索エンジンが存在していますが、実質的に検索における9割以上のシェアを誇る「Google」は検索市場のデファクト・スタンダードでしょう。
そして、コアアップデートとはGoogleによって実施されるGoogle検索エンジンのアルゴリズムの最適化を意味します。
2023年現在、コアアップデートは年に3回〜4回の頻度かつ不定期に実施されています。
2023年10月に実施されたコアアップデートは、過去に実施されたものよりも、非常に大きな変動を伴いました。
当サイトは、約2年の運営実績を持っており、これまでのコアアップデートでは順調にPV数を強化してきましたが、2023年10月のコアアップデートによって、初めてPV数減を経験しています。その下落率は大きく、連日、3割以上も減少するという結果になりました。
SNSの「X」を見る限りでも、過去に類を見ないPVの減少を経験しているメディア運営者も少なくないようです。また、傾向として企業サイトが検索上位になり、個人運営のサイトは軒並みPVが減少しているようです。
2023年10月のコアアップデートは大きな衝撃を与えましたが、実は想定可能なコアアップデートでもありました。そして、近年のテクノロジー分野と照らし合わせれば、Googleの真意が見えてきます。
2023年、AIや新しい技術分野に積極的な動きを見せているMicrosoftは、同社が開発・提供する検索エンジン「bing」に、ChatGPTで有名な最新の言語モデル『GPT-4』を搭載して大きな話題となりました。
この衝撃的なニュースをきっかけに、Google社内で「コードレッド」が発令されたとも報道されており、Googleにとっても大きな脅威となっています。
Googleは、不動の地位と思われたインターネット広告市場の支配的立場が脅かされる事態になっているのです。
bingによって開かれた「AI+インターネット検索」は、今後のインターネットにおけるユーザーの動向を大きく左右するテクノロジーの融合です。
AI+インターネット検索は、現在のところ、ユーザーが検索した検索ワードに基づき、検索エンジンによるリアルタイムな記事検索から情報を収集・要約し、ユーザーに提供するというアクションを行います。
なお、AI+インターネット検索においては、多くの記事から情報を収集するのは非合理的であり、必然的に検索上位サイトからの収集になります。
つまり、AIが提供する回答の品質は、そのキーワードによって検索される「上位記事の品質」が強く反映されます。品質を高めるためには、そもそも検索エンジンの精度を高めることが必須なのです。
2023年10月のコアアップデートは、Googleにとっても計画的ではなく試験的に実施されたものと当サイトでは考えています。
なぜなら、AI+インターネット検索はGoogleにとっても十分な実績や準備期間はなく、bingの脅威に対抗する材料探しとして実施されたと考えているからです。
Googleの企業体質は慎重ではなく「挑戦」。まずは実施して、何らかの実験結果を得る目的があるように思えます。
そして、その時点で記事の信頼性・権威性は企業サイトのメディアに偏っていたのでしょう。
当記事では便宜上、「企業サイト」や「個人サイト」と表現していますが、実際は企業or個人の判別はそれほど厳密に行っていないと考えています。
コアアップデートによって、大きくPVを落としたと見られる個人運営のサイト。今後の運営を不安視している方も多いと思いますが、当サイトでは個人サイトは必ず復活すると考えています。
この章では、その根拠を説明します。
どの企業でも、「お客様視点」を大事にします。メディア運営者であれば知っているようにGoogleも「ユーザーファースト」を掲げ、ユーザーにとって有益な記事を上位にすることを公言しています。
ただし、Googleも民間企業である以上、収益性の確保は最も重要な企業使命のひとつであり、収益なくしてユーザーファーストは実現できません。
ここで企業サイトと個人サイトの大きな違いを見てみましょう。
企業サイトは、メディア戦略として記事を執筆することが多く、その主な目的な自社サービスへの誘導です。そのため、Googleの広告(Adsense)は掲載されていない記事も多く見られます。
一方、個人サイトの記事はアフィリエイトも含みますが、Googleの広告も高い確率で掲載されています。
広告はメディア運営者にとっても収益になりますが、Googleにとっても大きな収益源です。それ以上に、Googleは広告が主要なビジネスであり、広告料なくして企業存続はありません。
その視点で考えると、このまま広告率が極端に低い企業サイトのみを上位表示し続けるとは非常に考えにくいのです。
最近になって、記事をクリックする前の検索結果が表示されている場面で広告が表示されることがあります。それは広告収入減に対する補填的な意味合いがあるのかもしれません。
Googleは多くの企業から広告出稿の依頼を受けています。
世界では、インターネットが主要な広告マーケットであるにも関わらず、このまま広告配信の機能が劣化すれば、情報検索としてのインフラ的な価値すら失いかねません。
Googleには、ユーザーファーストを遵守すると同時に、広告出稿者に対しての広告表示義務も課せられているのです。
この視点からも、広告掲載率の低い企業サイトのみを上位表示することは合理性に欠けます。
現在、AIとインターネット検索の融合系は、収益性を確保できていません。これは、Google内部の人間でなくても推測可能です。
インターネット検索してクリックした記事には広告が掲載されますが、AIが要約した文章には広告掲載のスペースがありません。
今後、何らかの形で広告を組み込むことも考えられますが、bingへの対抗とはいえ、AI+インターネット検索が主要な情報収集手段に置き換わるのは、まだ時間を要すると思われます。Googleもすぐに実現したいとは考えていないでしょう(あくまでも将来に向けた技術投資)。
そのため、2023年10月のコアアップデートは、AI+インターネット検索に向けた検証の意味合いが強いと考えています。
前述の通り、個人運営のブログメディアは復活すると思いますが、楽観視はできません。
検索エンジンは「自然言語処理」「ビッグデータ解析」「ディープラーニング」のテクノロジーが活用されており、近年、目覚ましく発展している分野でもあります。
今後、ビッグデータを精緻に分析し、より品質の高いアルゴリズムによって運営されることは間違いありません。
企業であっても、個人であっても、良質な記事は上位表示されるはずですが、同時に2極化は進むでしょう。現在のようにひとつのキーワードで100を超える検索結果は過剰な出力ともいえます。
よりユーザーニーズを捉えた検索エンジンで運営し、下位の記事は切り捨て、つまり「インデックス基準」を高める可能性もあります。記事を品質評価して、基準に満たない情報は切り捨てたほうが言語モデル(AI)の品質は高まるのです。
当サイトでは、近い将来、コアアップデート自体が自然消滅すると考えています。
高度に発達したディープラーニングシステムとビッグデータがあれば、アルゴリズムの調整は極めて短期間で行えるためです。今のように数ヶ月の期間は不要で、月次・週次・日次レベルで調整されるでしょう。
現在ですら、1日の中でも検索結果の順位は動いています。それが、より正確に調整可能であれば、わざわざ期間をおいてコアアップデートを行うメリットが見当たりません。
今回は、2023年10月に実施されたコアアップデートについての考察を記事にしました。
すべて根拠は示されておらず、当サイトの独自の見解になりますが、AIを背景にしたコアアップデートであることは間違いないと考えています。
さて、あまりのPV数減少にブログを辞めてしまおうかと考えている方もいらっしゃるでしょう。
ブログの魅力のひとつは、自分で戦略を考え、自分で実行し、自分で結果を得ることにあります。一方で、大変な労力を伴うのも事実。
これからも挑戦するか、手を引くか、2023年10月のコアアップデートは大きな転換期になるのかもしれません。