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GPT-3.5徹底解説:その基本概念と活用法を初心者向けに紹介

この記事では、ChatGPTで使われている言語モデル「GPT3.5」について、基本概念や使われている技術、学習手法などを初心者向けに説明します。

内容は初心者向けではありますが、専門の論文を元に自然言語処理の仕組みなどにも触れていますので、広範囲の知識が身につくと思います。

GPT3.5は、ChatGPTが一般向けにリリースされたことから認知度が高まりましたが、実は言語モデル自体は2020年から存在しており、その性能の高さと自然言語処理レベルの到達点にAI業界に衝撃を与えていました。

また、従来の会話型AIとは比較にならないほどの実用性も秘めており、後の『GPT4』の開発に大きな期待を抱かせました。

では早速、GPT3.5の世界に入っていきましょう。

GPT-3.5の概要

本記事では、タイトルに示す通りGPT-3.5をテーマとして取り上げていますが、2020年7月22日に発表された論文「Language Models are Few-Shot Learners」を基に、GPT-3の解説を行うことに重点を置いています。

これは、GPT-3.5に関する情報が限られており、その位置づけが明確ではないためです。

公式の情報や文献がほとんど存在しない中、GPT-3における差別的・暴力的な回答の問題がGPT-3.5で改善が図られたとの情報があります。GPT3.5はGPT3がベースになっていることは間違いありません。

GPT-3.5はGPT-3とGPT-4の間に位置する言語モデルとされていますが、GPT-3に比べて大幅なアップデートが実施されたという明確な情報は確認できていません。そのため、ベースであるGPT-3の理解を深めることで、GPT-3.5に関する知見を得るのが最も合理的なアプローチであると考えられます。

GPT-2からGPT-3(3.5)への進化

GPT-3は、GPT-2の基本アーキテクチャを継承しつつ、さらなる性能向上を目指して開発されました。

モデルの精度を向上させるために、学習データの質や量が増やされ最適化手法も改善されました。具体的には、GPT-2の学習データはWebTextというデータセットで、約40GBのテキストデータでしたが、GPT-3ではWebText2というデータセットにより、その規模が約40GBから約45TBに増加しました。

その後、データはフィルタリングやクリーニングを経て、約570GBの学習データセットに絞られました。データフィルタリングやクリーニングは、学習データセットの質や精度を高めるために行われます。具体的には、不要な情報やノイズを除去し、関連性の高い情報に焦点を当てることで、モデルが学習すべき重要なパターンや知識を効率的に捉えることができます。

その結果、モデルはより正確で洗練された結果を出力することが可能になります。また、GPT-2は15億パラメータを持っていましたが、GPT-3では最大1750億パラメータを持つモデルが存在します。これらの改善により、GPT-3は、より多様なタスクに対応することが可能になりました。

項目GPT-2GPT-3(3.5)
学習データセットWebTextWebText2
データ量約40GB約570GB
元のデータ量約45TB
パラメータ数15億GPT3:最大1,750億 ※モデルにより異なる
(GPT3.5:最大3,550億)
処理手法フィルタリング
クリーニング
フィルタリング
クリーニング
ファインチューニング可能可能(推奨)
トークナイザーBPE(Byte Pair Encoding)BPE(Byte Pair Encoding)

パラメータとは、機械学習モデルやディープラーニングモデルで学習データをもとに調整される重みやバイアスのような数値です。これらの数値は、モデルがデータからパターンを学習し、新しい入力データに対して予測や生成を行うために必要です。パラメータ数が多いほど、モデルはより複雑な関係やパターンを捉えることができますが、学習に必要な計算量も増加します。

GPT-3(3.5)の主な特徴と性能

GPT-3.5は、従来のAIと比較して非常に広範な知識を持ち、状況に応じた適切な回答を生成することができます。

ユーザーはGPT-3.5を使って、専門知識を持たない人でも理解しやすい形でさまざまな分野の情報を得ることができます。また、GPT-3.5はフューショット学習能力を持っており、少量のデータで高い性能を発揮できます。それによって、AI開発者は少ないリソースで高品質なアプリケーションやサービスを開発することが可能になりました。

フューショット学習とは、機械学習モデルが少量のデータから効率的に学習し高い性能を発揮することです。通常、機械学習モデルは大量のデータを必要としますが、フューショット学習では少数の例示を与えるだけで、モデルは新しいタスクに適応できます。GPT-3(3.5)は、フューショット学習能力を持ち、少量のデータで効果的な結果を出力することができるため、開発者は少ないリソースで高品質なアプリケーションやサービスを構築できます。

GPT-3.5は多様なタスクに対応できるため、AI業界において大きな価値を持っています。たとえば、自動翻訳、文章生成、質問応答などのタスクを1つのモデルでこなすことができます。その結果、開発者は複数の専門的なモデルを利用する必要がなく、GPT-3.5だけで多くのニーズに対応できます。

これらの特徴から、GPT-3(3.5)はAI業界に革新をもたらしており、さまざまな分野で活用されています。

トランスフォーマーモデルと注意メカニズム

トランスフォーマーモデルとは、自然言語処理において非常に重要な役割を果たすアーキテクチャで、GPT-3.5でも基盤として使われています。

この章では、トランスフォーマーモデルの基本概念と、注意メカニズムと呼ばれる重要な技術について説明します。

トランスフォーマーモデルの基本概念

トランスフォーマーモデルは、自然言語処理タスクにおいて、文脈を考慮した単語の表現を学習するためのディープラーニングモデルです。たとえば、文章内の「キー」という単語が「鍵」としての意味なのか、「音楽の調」の意味なのかを判断する際に、トランスフォーマーモデルは周囲の単語や文脈を考慮して、適切な単語の表現を学習します。

トランスフォーマーモデルは、文章の単語を順番に処理する従来のリカレントニューラルネットワーク(RNN)とは異なり、すべての単語を同時に処理することが可能です。これにより、計算効率が向上し、より大規模なデータセットや長い文章の処理が可能になります。

トランスフォーマーモデルでは、エンコーダとデコーダの2つの主要な部分から構成されています。エンコーダは、入力された文章をベクトル表現に変換し、デコーダは、そのベクトル表現を元に、新しい文章や予測される単語を生成します。

この過程では次節で説明する「注意メカニズム」が重要な役割を果たします。

注意メカニズムの役割と仕組み

注意メカニズムは、トランスフォーマーモデルが文脈を理解する際に、特定の単語間の関連性に重みを付ける役割を果たします。重み付けをすることによって、モデルは重要な情報に焦点を当てて処理を行い、無関係な情報は無視することができます。

たとえば、次のような文章を考えてみましょう

「彼女は日本で生まれ育ちましたが、現在はアメリカで働いています。彼女は英語を流暢に話すことができます。」

この文章で、「彼女が英語を流暢に話す理由」という問いに答えるために、注意メカニズムは次のような役割を果たします。

注意メカニズムは、「彼女がアメリカで働いている」という情報と、「彼女が英語を流暢に話す」という情報に重みを付け、関連性を強調します。一方で、「彼女が日本で生まれ育った」という情報は、問いに対して直接関係がないため、重みが低くなります。

このように、注意メカニズムは、文脈に応じて関連性の高い情報に焦点を当てることで、より正確な文脈理解を可能にしています。

GPT-3(3.5)の学習手法

GPT-3.5の学習手法には、教師あり学習と転移学習が用いられています。また、学習データの選択や前処理にも工夫がされており、高い性能を実現しています。

それぞれについて説明します。

教師あり学習と転移学習

教師あり学習とは、AIモデルが学習データセットに含まれる入力データとそれに対応する正解データ(ラベル)を使って学習する方法です。AIモデルは、正解データをもとに予測結果が正しかったかどうかを判定し、そのフィードバックを受け取ってパラメータを調整します。このプロセスを繰り返すことで、モデルの予測精度が向上していきます。

一方、転移学習とは、あるタスクで学習した知識を別のタスクに適用する学習手法です。GPT-3.5では、広範なタスクで事前学習された重みを持つ大規模なトランスフォーマーモデルを用いており、それを特定のタスクに適用するために、転移学習を行います。これにより、短期間で効率的に新しいタスクを習得することができます。

GPT-3(3.5)の学習データと前処理

GPT-3.5の学習データには、インターネット上のテキストデータが大量に含まれています。これには、ウェブページ、ニュース記事、書籍、論文、ブログなど、さまざまな情報源のデータが利用されています。

前処理とは、モデルにデータを入力する前に、そのデータを適切な形式に変換する作業です。GPT-3.5では、学習データをトークン化(単語や文節に分割)することで、モデルが扱いやすい形に変換します。

また、ノイズの除去やテキストの正規化など、データの品質を向上させる前処理も行われます。これにより、モデルは効率的に学習を進めることができます。

GPT-3(3.5)の活用事例

GPT-3.5は、その高い性能と汎用性から幅広い分野で活用されています。自然言語処理をはじめ、教育・研究分野やクリエイティブ産業でも、その潜在能力が引き出されています。

この章では、GPT-3.5がどのように活用されているのかを簡単に紹介します。

基本的な自然言語処理

GPT-3.5は、自然言語処理のタスクにおいて高い性能を発揮します。

たとえば、質問応答システム、文章要約、感情分析、機械翻訳など、多岐にわたる応用が可能です。その高い理解力と生成能力が、これらのタスクを効率的かつ精度高く実行するのに活用されています。

AIは感情を持ちませんが、文脈からその人の感情を推測することは可能です。

教育・研究分野での活用

GPT-3.5は、教育・研究分野でも活用されています。個別指導を行うAIチューターや、複雑な専門用語を含む論文の要約・解説を提供するツールなどが開発されています。

また、学習者が自然言語で質問を投げかけるだけで、専門家のような回答が得られることから、今後、個人の学習の場での活用もより進んでいくでしょう。

クリエイティブ産業での利用

クリエイティブ産業においても、GPT-3.5の活用が進んでいます。

文章の生成能力を利用して、劇場の台本、詩、短編小説など、多様な形で表現される作品の制作を支援することができます。また、広告やマーケティング分野でも、効果的なキャッチコピーの生成や、ターゲットに合わせたコンテンツの作成に活用されています。

GPT-3(3.5)の限界と課題

GPT-3.5は高い性能を持っていますが、まだ解決すべき課題や限界が存在します。

バイアス問題やセキュリティ・プライバシーに関する懸念、コンピュータリソースの課題などが挙げられます。今後の研究や技術開発によって、これらの課題が解消されることが期待されています。

バイアス問題

GPT-3.5は学習データに存在するバイアスを引き継いでしまうことがあります。そのため、偏った見解やステレオタイプを含む文章が生成されることがあります。今後のモデル改善やデータ前処理の工夫によって、バイアスの軽減が求められます。

バイアスとは、データの偏りや不均衡が結果に影響を与えることを指します。機械学習モデルやデータ統計・分析の場合、学習データや分析対象データに存在するバイアスが結果に反映されることがあります。データに偏りやステレオタイプが存在すると、それがモデルや分析結果にも影響を与え、不公平な判断や偏見を持った結果が得られることがあります。
※たとえば、商品の利用者アンケートを実施する場合、特定の年齢層のみに限定してしまうと、正確な結果が得られません。そのような偏りのことを「バイアス」といいます。

セキュリティとプライバシーに関する懸念

GPT-3.5を利用する際には、セキュリティやプライバシーに関する懸念があります。悪意のある利用者が攻撃的な文章を生成したり、機密情報を漏洩させる可能性があるため、適切なセキュリティ対策や利用制限が必要です。

コンピュータリソースの課題

GPT-3.5の学習や利用には大量のコンピュータリソースが必要です。そのため、環境負荷や費用の面で課題が生じます。今後は、効率的なアーキテクチャの開発やコンピューティング技術の進歩によって、リソースの最適化が期待されています。

あとがき

本記事では、GPT-3.5の基本概念やその活用、限界と課題について初心者向けに解説しました。GPT-3.5は、自然言語処理やクリエイティブ産業など多岐にわたる分野で活用されており、その重要性はますます高まっています。

一方で、バイアス問題やセキュリティ、コンピュータリソースの課題など、解決すべき課題も存在しています。今後の技術開発によって、これらの課題が解消され、より実用的になることが期待されています。

また、GPT-3.5に続くGPT-4は世界で非常に注目されています。GPT-4は、GPT-3.5の一部の課題を克服し、さらなる性能向上を実現しています。

当サイトでは近日中に、GPT-4に関する詳細な解説記事を公開予定ですので、ぜひお楽しみにしていただければと思います。今後も、GPTシリーズの最新情報をお届けしていきます

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