2022年後半から2023年にかけて、世界のAIテクノロジーは飛躍的に進歩しました。
文書生成AIや画像生成AI、具体的にはChatGPTやMidJourneyといったジェネレーティブAIが誰にでも使えるようになったのです。
これまでは製品に組み込まれた形で享受していたAIを、誰もが自らの意思で活用できるようになったのです。
さて、これから加速的に進化するAIは、どのような歴史を辿ってきたのでしょうか? そして、人類はいつからAIに取り組んできたのか。
この記事でAIの歴史を紐解いてみましょう。
想像してみてください。現代のスマートフォンやPCが存在しない世界。
その時代、計算やデータ処理を手動で行う必要がありました。その後、人々のニーズや科学技術の進歩を背景に、自動で計算を行う機械のニーズが高まりました。これが、コンピューターの原初の姿となります。
1940年代には、ENIACやEDVACといった初期のコンピューターが登場します。これらは、現在のコンピューターと比べて非常に大きなサイズで、単純な計算を自動で行うことを主な目的としていました。しかし、これらの機械は人工知能の土台となる技術の礎を築くこととなります。
コンピュータの登場は、情報処理の自動化とともに、複雑な計算の高速化を実現しました。この革新は、後のAI研究においても大きな影響を与えることとなり、人々の生活やビジネス、科学技術の進歩に欠かせないものとなったのです。
1960年代、コンピューター科学の世界は、それまでのマイナーな時代から一変し、活気づいた時代へと突入します。商用の大型コンピューターが銀行などの大企業でも活用されるようになったのです。
また、この時期には、初めてのAIに関する研究所や専門の学会が設立され、AIに関する研究が盛んに行われるようになりました。
IBMのような大手企業が商用の大型コンピュータを開発し、ELIZAのような初の自然言語処理プログラムが誕生。これにより、マシンが人間の言葉を理解し、それに応じた反応を返すことが可能となりました。
しかし、この時期のAIの研究は、現代のAI技術とはかなり異なるものでした。限られた単純な問題にしか対応できず、現実的で複雑な問題には対応することができなかったのです。
当時、AIに対する期待が大きかったため、現実に対する失望感も大きく1970年代の前半でAIブームは収束を迎えます。その後、1970年代はAIが注目されることは少なく冬の時代に突入することになったのです。
イメージは「1960年代 メインフレーム」をキーワードに、ジェネレーティブAIで生成した画像です。必ずしも正確なイメージではありません。
商用コンピューターが大企業で活用され、AIに関する研究も始まった。ただし、単純な回答しかできずに失望感からAIブームは収束を迎える。
※この年代を[第1次AIブーム]として下記の記事で詳しく説明しています。
1980年代の初め、AIは1970年代の「冬の時代」と呼ばれる期間を乗り越え、再び注目されることになります。冬の時代の背景には、過度な期待からくる失望や技術的な制約がありましたが、1980年代に入ると、これらの問題が徐々に克服されるようになったのです。
この時代のAI研究の特徴としては、専門家の知識をコンピュータに組み込む「エキスパートシステム」の開発が挙げられます。これにより、特定の分野での意思決定をサポートするためのAIアプリケーションが多数実用化されました。たとえば、医療診断や金融のリスク評価など、さまざまな業界での導入が進められました。
さらに、1980年代はハードウェア技術の進化もあり、より高速な計算が可能となりました。これにより、複雑なアルゴリズムやデータ処理が現実的に行えるようになったのです。
しかし、エキスパートシステムの限界も次第に明らかになり、再び期待と現実のギャップが生まれました。システムの開発・保守が複雑で高コストであること、そしてシステムが柔軟性に欠けることが問題となり、1990年代の半ばには、ブームは再び収束へと向かったのです。
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エキスパートシステムの台頭とその限界、ハードウェアの進化とそれに伴う高まる期待。しかし、システムの複雑さや柔軟性の不足から、ブームは再び収束を迎える。
※この年代を[第2次AIブーム]として下記の記事で詳しく説明しています。
2000年代に突入すると、AIの世界は新たな波を迎えました。この波は、現在まで続く盛り上がりを見せています。この時代のAIブームの背景には、いくつかの要因が絡み合っています。
まず、コンピュータハードウェアの驚異的な進化です。特に、グラフィックスプロセッシングユニット(GPU)の発展は、膨大なデータを高速に処理する能力を手に入れたことを意味しています。これにより、「ビッグデータ」という言葉が広まる中、多量のデータの解析と処理が現実的に実現可能となりました。
そして、このデータ処理の能力を背景に、「機械学習」と「ディープラーニング」が誕生。データから自動的にパターンを学習し、それを基に判断や予測を行うこの技術は、AIの可能性を飛躍的に広げました。
特にディープラーニングは、多層のニューラルネットワークを活用することで、文字認識・画像認識・音声認識といった領域での実用化を実現したのです。
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最近では、ジェネレーティブAIの登場により、AIは単に情報を解析・予測するだけでなく、新しい内容やアイディアを「生成」する能力も持つようになりました。これにより、クリエイティブな領域でもAIの活用が進んでいます。
ハードウェアの飛躍的な進化とビッグデータの登場。機械学習とディープラーニングの革命による各種認識技術の実用化。そして、ジェネレーティブAIによる新たな可能性の拡がり。
※後日、この年代を[第3次AIブーム]として詳細を別記事で説明します。
人類が長い間夢見ていたAIの完成形が、ついに現実のものとして姿を現し始めました。
特に2022年の後半から2023年の前半にかけて、AIの進化はこれまでとは比較にならないスピードで前進しています。ChatGPTやMidJourneyのようなジェネレーティブAIが登場し、これまでの専門家だけのものであった高度な技術が、今では誰もが手軽に利用できる時代を迎えたのです。
この新しいAIブームは、以前のものとは大きく異なる特徴を持っています。
それは、このブームが一時的なものではなく、恒常的なものとして私たちの生活に定着していくことです。AIの発展は終焉を迎えることなく、かつてない速さでの進化を続けることは確実です。
未来の社会は、この時代をAIの真の「幕開け」として振り返ることでしょう。