国内で使われている2大RPAは「UiPath」と「WinActor」ですが、2021年になってMicrosoftは自社で提供しているRPAソフトウェア「Power Automate Desktop」をWindows10ユーザーに向けて無料公開しました。
マイナーなものも含めると、現在、国内には相当な数のRPAソフトウェアが存在していると思います。
今回は、今、特に注目を集めているPower Automate Desktopのデモ動画も兼ねて、UiPathとWinActorを含め処理速度の比較検証を行いましたので、ご関心のある方はぜひご覧ください。
2021/09/06
当記事について、「Power Automate DesktopとUiPathの比較」でアクセスされることが多いため、速度面のみではなく性能面の比較も後半に追記しました。
はじめに
今回紹介するRPAソフトウェアは、どれも国内で有名な製品ですが、RPAのことをあまりご存じでない方も多くいらっしゃいますので、それぞれについて、簡単に説明します。
Power Automate Desktopとは
Microsoftが提供している無料のRPAソフトウェアです。
世間的に、「無料=何らかの制限あり」といったイメージが強いですが、Power Automate Desktopは、本当に事務作業を自動化することができるRPAソフトウェアです。
性能的に、年間ライセンス費が数十万~百万円もする他のRPAソフトウェアと同等とはいいませんが、活用することで社内のデジタル化・自動化・効率化に大きく貢献すると確信できます。
UiPathとは
ルーマニア発のUiPath社が提供するRPAソフトウェアです。
世界でもトップクラスのシェアを誇るUiPathは、2017年、日本法人を設立しソフトウェアも日本語に対応したことから、国内でも急激に導入企業が増え、MM総研が調査した「RPA浸透率ベースのシェア」では、国内No1という地位を築きました。
事実、国内のRPAソフトウェアの中でも抜群の性能を誇っており、機能面・速度面においても、欠点が見当たりません。
反面、ツールとしてのUiPathは、レベル感が高めで中級者から上級者向けになるかと思います。
※何らかのプログラム言語にも触れたことのないユーザーにとっては、難しいツールです。
WinActorとは
国内のNTTグループで開発された純国産のRPAソフトウェアです。
「プログラミングなどの特別な知識がなくても使える」といったPR文言を強調し、国内で高いシェア率を維持しています。
事実、ツールとしてのWinActorは、初心者にとって他のRPAソフトウェアよりは使いやすい印象があります。ただし、「ツールの使いやすさと業務の自動化の実現性」はイコールではないため、今後の競合ツールとのシェア争いに注目です。
性能面や価格面で、本格的に比較されるような状況においては、必ずしも優位な立場ではない気がします。
処理速度対決
動画
作業の概要
Excel(エクセル)に入力されている社員情報を社員台帳システムに転記する作業です。
Excel(エクセル)の最終行を取得して、そのレコードの数分、繰り返し処理をします。また、1件処理が完了する都度、処理日をExcel(エクセル)に返します。
なお、各社員の情報から個々の週間勤務時間を算出し、週20時間以上の勤務であれば、社会保険に加入するという判定も行っており、RPAの中で分岐として設定しています。
下記の記事で、同業務内容の詳細を説明しています。
その他
UiPath、Power Automate Desktop、WinActor、それぞれにおいては、可能な限り公平な比較になるようにワークフロー(シナリオ)を構築しています。
また、高速化が可能な部分については、可能な限り処理が速くなるようにチューニング済みです。
特にUiPathは、比較的カスタマイズ性が高く高速化のチューニングが可能なため、結果が大きく変わります。
処理速度対決の結果
前記、YouTubeの動画で具体的に公開していますが、処理速度対決の結果は、UiPathの圧勝でした。
<処理速度(10件の転記作業)>
- (06秒)UiPath
- (15秒)WinActor
- (41秒)Power Automate Desktop
UiPathは驚異的な速さです。UI要素の認識・処理・Excel(エクセル)などのアプリケーションの操作、どれをとっても安定的に高速で処理をしてくれます。
Power Automate Desktopは、今回の処理速度対決においては最下位で、2位とも大きな差が開いていますが、人間の処理と比較すると圧倒的に速く正確です。
処理自体は完璧に行えているので、無料で使えることを考慮すると充分な性能でしょう。
Power Automate Desktop│UiPath 比較
2021/09/06追記分
はじめに
メディアサイトを運営していると分かるのですが、世間的にPower Automate DesktopとUiPathの比較のニーズが高いようです。
そのため、両RPAについては、速度面のみではなく性能的な比較についてもお伝えしたいと思います。なお、Websは日常的にUiPathを使っており、エンジニアとしての実務経験もあります。それを前提とした見解となります。
結論
結論から書くと、両RPAは比較になりません。UiPathの圧勝です。小規模から大規模な業務まで自動化することを想定されたUiPathは、事実として国内の多くの大企業で導入されています。
一方、Power Automate Desktopは、わたしの感覚では「ひとり1台のRPA」をコンセプトに作られたようなRPAで、いち事務担当者が自身のパソコンに導入して自動化を行うような製品です。Excelのマクロ(VBA)の発展版と考えれば分かりやすいでしょう。
Power Automate Desktopの性能をお知りになりたい方は、WebsがYouTubeで公開しているサンプル動画をご覧ください。小規模ではあるものの、自動化は実現できています。
Power Automate Desktopは、例えば、初めて会社にRPAを導入するときの第1段階として検討したり、RPAの年額ライセンスと業務量のコストパフォーマンスのバランスが取れない会社にとって有用でしょう。
そして、社内の大がかりな業務はUiPathに任せて、個々の担当者の細やかな業務をPower Automate Desktopに任せるのもよいでしょう。2つのRPAを導入することに違和感があるかもしれませんが、実際に複数のRPA製品を導入している会社は多いです。
社内の活用状況にもよりますが、Power Automate Desktop は優秀なRPAではあるものの、UiPathの代わりにはならないでしょう。
あとがき
RPAソフトウェアは、社内の事務作業を効率化するためのツールであり、「速さ」が最需要なファクターではありませんが、Power Automate Desktopの性能や他のRPAソフトウェアとの比較情報も、同ツールを活性化させるうえで有効かと思いますので、今回の記事で検証してみました。
わたしは、そもそもRPAを活用するためには、「現行の作業手順の見直し・削減、不要な業務の廃止」といった事務作業自体の再構築が最も大切な工程と考えています。
再構築(コンパクト化)された事務作業に対して、RPAを活用した自動化が実現できれば、大きな結果として返ってくるでしょう。
Power Automate Desktopは、無料で使えるRPAとして、とても価値のある高い可能性を秘めたツールです。
ぜひ、社内のデジタル化の推進・効率化に積極的に活用していきましょう。