RPAの「失敗の割合が高い」と「進まない理由」を現場視点で紹介

RPAを導入した企業の失敗の割合について、実態を表す正確なデータはありませんが、一般に半数以上の企業が満足な結果を得られず失敗に終わる、または思うように進んでいないといわれています。

わたしは、現役のRPAエンジニアですが、わたしの感覚値としても、やはり半数以上の企業がうまく活用できていません。

RPAは、なぜ失敗の割合が高いのか。また思うように進まないのか。

今回は、その理由について記事を書きます。

RPAが失敗する、または進まない理由

この章では、RPAの導入が失敗する理由とRPAの活用が思うように進まない理由について考えてみます。もちろん、企業によって様々な理由があると思いますが、個人的に実は下記の理由に集約されるのでは、と考えています。

なお、失敗する理由進まない理由は一緒と思います。思うように進まず、社内の認識として「RPA案件が止まったとき」や「諦めたとき」が失敗と結論付けられるタイミングだからです。

プログラミング的思考の欠如

当サイトでは、何かと紹介していますが、「RPAはプログラミングの知識が不要です」といった誤ったPRによって、本当に簡単に扱えると思い込んでしまうと、失敗の確率が飛躍的に高まります。

『フルマラソンなんて、経験がなくても誰でも完走できますよ。走るだけです。』と言われて、何の経験もない人が何の準備もせずチャレンジし、リタイアするようなものです。

たとえば、RPAの研修事業者が提供する「RPAの操作研修」のみを受講し、何とか研修のカリキュラムの自動化プログラムを作成できたとしても、根幹的な「プログラミング的思考」が身に付いていないと、実際の業務をRPA化するのは不可能です。

そのため、RPAの操作研修を学んでも、実際の業務に直面したとき、「?。何をすればいいんだっけ・・」となるわけです。

この状況を次の例題で体験してみましょう。

例題(超初級)

ExcelのA列に算数のテストの点数が記録されています。RPAやプログラミングを使って、A列を点数の低い順に並べ替えてください。

まずは、プログラミング用のフローチャートを書いてみて下さい。

わたしの経験上、こんなに簡単な処理にも関わらず、ほとんどのプログラミング未経験者は解けません。そもそも、何が問題の論点なのか、どう答えればよいのかが分からないのです。(それが普通です)

わたしがRPAでも必要と述べている「プログラミング的思考」は、物事や事象をロジカルに考える思考です。具体的には、処理の順番や条件をフローチャートのようにイメージ化し、プログラミングする能力です。

さて、処理をどのような順番でプログラムを組めばよいのか、考えてみてください。(3つから4つ分の処理です)

解答
①セルA1にカーソルを置く

まずはセルA1にカーソルを置きます。その後、キーボードの Ctrlキーと↓ を押下します。※カーソルがデータの最終行に到達します。

②A列の最終行を取得する(変数へ格納)

RPAでもプログラミングでも、Excelを扱う場合には、「最終行の取得」というアクションがよく使われます。処理の範囲や回数を判断するためです。

③A2:A7の範囲を指定し、昇順で並べ替える

ここまでの工程で、A列の最終行は「7行目」であることが分かっていますので、タイトル行を除く2行目から7行目に対して降順の並べ替えを実行します。

自動化するときには、上記の流れをRPA(またはプログラミングコード)で作成します。

これは、RPAの導入にチャレンジしたことがあるプログラム未経験者の方なら思い当たる事例でしょう。

RPAは、実際に自動化プログラムを作成するよりも、業務を整理しフローチャート化する工程のほうが難しいのです。人間が長年対応してきた業務は、担当者依存の処理になりやすく、すべての工程において明確な判断基準がない場合が多いです。

このようにRPAの活用には業務手順の熟知と併せて、「プログラミング的思考」が必要です。

リーダーの強さ

RPAで業務を自動化する際には、ただ正確にフローチャートを描けばよい訳ではなく、担当者の判断に依存している箇所を機械的に判断できるように、ルールを再定義する必要があります。

何もせずに、自動化ができる状態になっている業務はほとんど無いと考えましょう。

合わせて、無駄な箇所を削除したり、非効率な箇所を省略したりと、大幅な整理を伴うこともあります。

通常、業務手順の変更には「リスク」も伴います。業務手順がシンプルになることはよいのですが、関係部署からリスクが指摘されることもあるでしょう。

考慮すべきリスクもありますが、たとえば発生確率が10,000件に1回、被害もそれほど大きくない小さなリスクであれば、思い切って効率を重視しRPAを進める勇気も必要です。

そこはリーダーの判断力、強さにかかっています。リーダーが優柔不断であれば、RPA案件も停滞し易いでしょう。

モチベーションの低下

RPAが失敗する理由、進まない理由のうち、最終的に陥るのがモチベーションの低下です。

思ったよりも難しく、また部門調整もうまくいかない。常にどちらかの部署(担当者)が課題を持ち帰り、明確な解決策を見いだせない。

このような状況が続けば、RPAに対する期待感が弱くなり、モチベーションの低下を引き起こします。モチベーションは、特に新しいことに挑戦するうえでの原動力であり、チーム単位でモチベーションを失った場合、もう目標の達成は困難です。

あとがき

今回は、RPAの導入が失敗する・進まない理由について記事にしました。

これからRPAの導入をご検討されている方も、失敗・進まなかったご経験のある方も、原因をしっかりと参考に(分析)し正しい導入に取り組みましょう。

まずは、「RPAはプログラミング的思考が必要」と理解することが重要です。