RPAは実稼働後もメンテナンスが必要なの?理由も含めてお答えします

RPAの導入には、まず対象業務の選定、手順の見直し・再構築から、自動化プログラム(ワークフロー・シナリオ)の作成、検証、試験導入から実導入と、その道のりは簡単なものではありません。

さらに、正しい工程でRPAを実践導入しても、その後、一切のメンテナンスが不要という訳でもありません。

このような説明をすると、RPAの敷居を高めてしまうようにも思えますが、導入後の運営についても正しい認識を持ったほうが、安心できるもの。

RPAが突然、動かなくなるよりも、どのような理由でメンテナンスが必要になるのかを予め理解していたほうが、心構えや事前の対策もできるようになるのです。

この記事では、RPAは実稼働後もメンテナンスが必要になることについて、具体的かつ代表的な理由を紹介します。

RPAは不定期にメンテナンスが必要

RPAは、実践導入後もメンテナンスが必要になるケースが多いです。なぜ、メンテナンスが必要になるのかを下記で説明します。

01_UIや見た目の変更 ※外的要因

RPAは、パソコン上のアプリケーション等を自動操作する仕組みのため、RPAにアプリ上のボタンや入力枠を認識させる必要があります。

アプリ上のボタン
アプリ上のプルダウン

これらの要素をRPAに認識させる方法は主に2種類あり、それぞれ『UI要素認識』、『画像認識』と呼ばれています。

UI要素の詳細は別記事で紹介していますので割愛しますが、要はアプリケーションのソースコードを解読し、ボタンを認識しています。

そのため、アプリケーションのバージョンアップ等により、そのソースコードが変更になった場合には、これまで認識できていたボタン要素を認識できなくなってしまい、エラーが発生します。

同様に、『画像認識』はその要素を画像としてマッチさせる仕組みになっていますので、ボタン等の形状や色が変わった場合にエラーが発生します。

このようにアプリケーションのバージョンアップに伴うエラーは「外的要因」に分類され、エラーが発生して初めて対応に迫られるケースがほとんどです。

この場合、バージョンアップ後のアプリケーションに合わせてRPAもメンテナンスする必要があります。

また、最近起こった事例としてMicrosoftのIEのサポート終了が挙げられます。もちろん、IEを使用することを前提に組み上げたRPAであれば、他のブラウザに変更しなければならずメンテナンスが必要になります。

内的要因の場合も・・

例えば、デスクトップ上のアイコンを画像認識でクリックする場合、背景を変更すると、画像認識でマッチしなくなり、エラーとなる可能性が高いです。(画像の範囲に背景が含まれているか、やマッチの精度を設定できる場合があるため、100%エラーになるとは言い切れません)

02_例外的事象の発生 ※検証不足

RPAでは、業務手順を洗い出し想定されるすべての事象をプログラムすることが基本ですが、場合によっては、例外的事象が発生してしまうこともあります。

たとえば、何らかのアプリケーションへのログイン処理を伴うRPAの場合、数カ月間後に、「パスワードを変更してください」といった想定外のウィンドウが表示され、パスワードの定期変更が求められた場合などです。

これは、RPAの制作時に想定していなかった場合、発生しやすいエラーのひとつです。

理想的な対策

パスワードの定期変更もRPAの中で対応することは可能ですが、セキュリティの観点上、定期的に人間がパスワード変更を行ったほうがよいでしょう。

その他、自動化する際に想定していなかった事が発生してしまうこともあります。たとえば、「社員マスタの性別の入力箇所について入力必須を前提としていたが、未入力のケースが発生してしまった」などです。

入力必須やデータ形式(数値型・日付型・文字列型)は、RPAでは最重要とも言える定義のため、ルールとして認識させるだけではなく、入力フォーム等で制限をかけることが必須です。

基本的にエンジニアは、例外的事象の勘所に長けていますので、検討段階で業務内容は綿密に詰めておきましょう。

入力フォーム上の対策や発生した事象自体の対策が可能であればよいのですが、度々、発生することが新たに判明した事象については、エラーを回避するため、RPAのメンテナンスが必要になります。

03_RPAのバージョンアップ ※外的要因

これは、わたしは経験したことがありませんが、場合によってはRPAのバージョンアップにより、一部、メンテナンスが必要になる可能性もあります。

RPAが国内で活用され始めてまだ4~5年程度のため、あまり発生自体がないかもしれませんが、今後数年間の運用を続けるうちに発生する可能性はあるでしょう。

04_業務の一部変更 ※内的要因

上記に分類されないケースとして、業務手順そのものが一部変更になる可能性もあります。

この場合も、当然、RPAのメンテナンスが必要になります。

あとがき

今回は、実践導入したRPAであっても、運用を続ける中でメンテナンスが必要になることは普通であり、それらの代表的な事例を紹介しました。

具体的な事例のため、ご理解し易かったのではないでしょうか。

RPAについては、社内のITリテラシーでは対応が難しく、制作や運用管理を外部委託している企業も多いかと思いますが、わたし個人の意見としては、仮に現時点で外部委託という手段は最善の選択肢だとしても、同時に社内のIT人材の育成も行ったほうがよいです。

今回の事例で紹介したメンテナンス理由は、大幅な変更を除き、そこそこの知識を持っていれば対処できるケースがほとんどです。もちろん、RPAの編集には慎重を期す必要がありますが、社内のITリテラシーを高めることは不利益にはなりません。

たとえ、メンテナンスまではすぐに対応できなくとも、RPAの仕組みに触れ理解を進めていくことで、デジタル活用の意識も情報収集のアンテナ感度も高くなり、会社の成長に貢献する有益な人材に育つ可能性があるからです。