RPAは日本だけで流行している?海外のRPA事情はどうなっている?

日本では、2017年頃から認知度が高まり企業で活用され始めたRPAですが、日本だけで流行しているのか、または海外でも使われているのか、気になったことはありませんか?

元々、RPAの発祥地は英国とされており、先進国において、「RPA(Robotic Process Automation)」という言葉は、共通認識として通じるようです。

RPAの世界における国単位のシェア率等は、あまり情報として発信されていませんので、細かくお伝えすることはできませんが、当サイトなりに海外のRPA事情をまとめてみました。

RPAの流行は日本だけか?

この章では、「RPAの流行は日本だけか」という問いに対して見解を述べます。

RPAの始まり

当サイトでは何度も説明していますが、RPAとはビジュアル化されたプログラミングツールです。つまり、「プログラミング技術」が根幹であり、真新しいテクノロジーではありません。

よって「RPAの始まり」については、明確に答えることが難しいです。プログラミングと区別するのであれば、「RPA」の定義が必要ですね。

例えるなら・・

エクセルの「マクロ」をイメージしてみて下さい。作業はエクセル内に限定されますが、VBAというプログラミング言語によって、エクセルの作業は完全に自動化することが可能です。Robotic Process Automationが事務作業の自動化を意味しているのであれば、「マクロ」も概念的にはRPAと同一です。

一応、現存するRPAソフトウェアには下記の共通的な特徴があります。

RPAの特徴

  • コード形式ではなくビジュアル化されている
  • プログラミング言語を意識させない構造になっている
  • 画像認識機能がある
  • Webスクレイピング機能がある

このような特徴を持つ業務自動化ツールという観点では、RPAの始まりは英国産の「Blue Prism」というRPAソフトウェアとされています。

Blue Prismについて

Blue Prismは日本国内でのシェア率は高くないものの日本法人が設立され、日本市場でも展開されています。また、性能的にも上位クラスのRPAです。

MicrosoftのRPA

近年、「復活した巨人」「大復活」などと形容され、GAFAと肩を並べるとも言われている世界的企業Microsoft。

MicrosoftはOfficeツール以外にも、PowerPlatFormというクラウドサービスで様々なビジネス向けアプリケーションを開発・運営していますが、2021年3月に自社のRPAソフトウェア「PowerAutomateDesktop」をWindows10(当時)ユーザー向けに無料公開しました。

MicrosoftもWindowsOSも世界的に使われている製品になりますので、「Power Automate Desktop」も世界向けに開発されたRPAソフトウェアです。

RPAは日本だけではない

前述の2節で説明した通り、そもそもRPAの始まりは海外であり、世界的企業であるMicrosoftが全世界向けにRPAソフトウェアを展開していることから、RPAは日本だけではないことは明確です。

一方、RPAを世界規模で見たとき、日本市場のシェア率は25%とされており、人口分布や一般的なグローバル製品のシェア率(日本市場の売上比率は5%~10%程度)から考えると、日本がひときわ高いシェアを誇っていることが分かります。

整理すると、RPAは日本だけで使われているものではないが、世界の4分の1のシェアを握っている、ということになります。

世界のRPA事情

この章では、限定的ではありますが世界のRPA事情について、当サイトの見解も含めて記述します。

前提:日本の国際競争力

前提として、よいお話ではありませんが、権威ある世界的ビジネススクールIMD(国際経営開発研究所)の毎年のレポートによれば、近年の日本の国際競争力は低く、最新の2022年版では全64か国中34位

「ビジネスの生産性」という単一の項目に至っては60位と極めて低い順位となっています。先進国の中でも大きく後れを取っており、残念ながら日本は『デジタル後進国』という位置づけなのが現状です。

補足

この前提は、「日本市場はRPAのシェア率が高いからIT先進国」といった誤ったイメージを排除することや、次章で紹介する「海外発のRPAソフトウェア」の性能の高さを説明することが目的です。

世界のRPAソフトウェアのシェア率

世界的な調査機関である「ガートナー」の調査(2018年)によると、世界のRPAソフトウェアのシェア率は下記の通りです。

RPA世界シェア

  • UiPath(ROU)・・13.6%
  • Automation Anywhere(USA)・・12.8%
  • Blue Prism(GBR)・・8.4%

※カッコ内は開発国の国コード

どれも非常に高い性能を誇るエンジニア気質のRPAソフトウェアになっています。海外は日本とは異なり、「簡単・初心者向け」をウリにした製品ではなく、性能やその企業の将来性で評価されていると思われ、現にこれらのRPAは、AIなど次世代テクノロジーとの融合にも積極的に取り組んでいます。

日本市場のシェア(25%)が高い理由

前章で触れましたが、世界規模で見たRPAの日本市場のシェア率が25%と高い数値を誇っている理由について。

これは、当サイト独自の見解になりますが、次のような理由が挙げられると思います。

<海外の特徴>

ITリテラシーの高さ

ITリテラシーの高い海外では、そもそも事務作業の効率化が図られており、日本ほど事務作業が負担になっておらず、必然的にRPAの必要性も日本ほど高くない、または、RPA以前にプログラミング(Java等)で一定の自動化が実現されているのでしょう。

合理性の高さ

多国籍国家であるアメリカでは、どのルーツの民族であっても業務が遂行できるように、業務のマニュアル化や徹底した合理化(効率化)が図られているとも考えられます。

海外の転職事情

海外では「よりよい待遇を求めて転職すること」はごく普通の行為であり、いつ担当者が辞めてもよいように、という視点からもマニュアル化・合理化が自然に進められていると思います。(属人化の排除)

事務処理の考え方

「成果主義」を基本とする文化圏では、定型業務に割く時間は少なく、新しいことや高付加価値を生む分野への挑戦が多くなると思います。

また、個人的な印象になりますが、日本ほど細かい事務ミスに気遣うとも思えないため、事務処理自体が重視されておらず、前記の通り、ある程度効率的な手順になっているのであれば、それで良いと考えているのかもしれません。

国産RPAと海外発のRPA

この記事の最後に、RPAの導入をご検討されている企業向けに、国産RPAと海外発のRPAの特徴について、当サイトの見解を紹介します。

前章で説明した通り、現在の日本の国際競争力は低迷しており、テクノロジー分野においても大きく後れを取っています。

これは、RPAソフトウェアの特徴にも顕著に表れており、具体的なソフトウェアの名称は控えますが、日本で高いシェアを誇る国産のRPAは開発・販売会社のPRを見ている限り、「日本語表記」「簡単に使えること」「見やすいこと」を最重視しているようですが、海外発のRPAは基本性能の高さに加え、業務の自動化に留まらず、AIとの融合やプロセスマイニング、AIチャットボットなど、より高度なテクノロジーを取り入れることに積極的に取り組んでいます。

日本語表記について(重要)

今では、海外発のRPAも日本語表記に対応し始めていますが、そもそも「日本語表記であること」をRPA選定の条件に含めてはいけません。それは『性能の本質』ではないからです。

一見、日本語表記は使いやすそうに思えますが、日本語表記が不十分でもすぐに慣れます。「Excelの関数『SUM』や『IF』が日本語だったら使いやすいのになぁ」とは思わないでしょう?

企業のデジタル活用は、RPAのみで完結できるものではありませんので、個人的には高度なテクノロジーへ積極的な意欲を見せている海外発のRPAを導入するほうが圧倒的によいと考えています。

なお、わたくしは国産のRPAもUiPathも実際に利用したことがありますが、UiPathは国産のRPAと比較すると、比べ物にならない程の高い性能を持っています。業務内容によっては、処理速度が2倍以上になることも珍しくありません。

各RPAソフトウェアには、30日~60日程度の無料トライアル期間がありますが、短絡的な使い勝手のみではなく、高度テクノロジーへの対応など、将来的な活用も含めて検討したほうがよいでしょう。

あとがき

今回は、「RPAは日本だけか」と「海外のRPA事情」について書きました。

一部、批判的な意見のように見える箇所があったかと思いますので補足しておきます。

今、ご自身が使っているパソコン内のアプリケーションを確認してみてください。Officeソフトを始め、コミュニケーションソフトや画像編集ソフト、メーラー、Webブラウザ、セキュリティソフト。

そのほとんど全てが海外製のアプリケーションであることに気付くでしょう。日本を卑下するつもりはありませんが、グローバルなソフトウェア分野において、日本はマイナーな国なのです。

80年代以前の日本人にとっては「国産」が一種のステータスのように思えますが、現在の世界はそうではありません。

RPAの選定は、専門的な知識がなければ難しいかもしれませんが、「自社にとって有益かどうか」で選定されるべきであり、国産を優先するものではないのです。

導入に成功すれば長年使うことになるRPA。将来性も含めて正しい見解で選定しましょう。