国内で右肩上がりの成長を続けている業務自動化のテクノロジー「RPA」。最近、一部でRPAは古いという見解も聞かれているようです。
確かにIT分野の進化は目覚ましく、今の技術レベルが長期に渡って通用することは、ほとんどないでしょう。ただし、RPAには3つのクラスという定義が存在しており、単純に短命で終わる訳ではなさそうです。
RPAの現状と将来性について、この記事で解説します。
業務自動化のテクノロジー
「RPAは古いか」を考えるうえでは、業務自動化のテクノロジーがどのように発達し、なぜRPAが脚光を浴びたのか、を考える必要があります。少し長めの前置きになりますが、まずは業務自動化のテクノロジーの歴史を紐解いてみます。
国内のRPAの黎明期
国内のRPAの黎明期は2017年頃といわれています。事務作業用ロボットという表現で、業務効率化の最新テクノロジーとして脚光を浴びました。
ただし、RPAの黎明期と業務自動化の黎明期は、少し意味合いが異なります。
このサイトで何度も解説していますが、RPAはプログラミングをビジュアル化したツールで、中身はプログラミングそのものです。
RPAというツールを使わなくても何らかのプログラミング言語さえ使えば、業務の自動化は実現できるのですが、プログラミング自体、一般化された技術分野ではありませんので、事務作業に活用できるのはごく限られた一部の組織でしょう。
一般的に、情報システム部門を設置しているような大企業でも、各部門の事務作業をプログラミングによって自動化する取り組みは行ってきませんでした。
Excelに搭載されたVBA
MicrosoftがExcel(エクセル)にVBAを搭載したのは1994年、今から25年以上も前です。
VBAは、MicrosoftのOffice製品に共通したプログラミング言語であり、国内のビジネスシーンで圧倒的なユーザー数を誇るExcel(エクセル)上の業務は、この時点でVBAを活用して自動化できる環境が整っていた訳です。
また、VBAには現在のRPAでも基本機能として使われている「操作のレコーディング機能」も搭載されました。
従来のプログラミング言語よりも少し敷居が下がり、これまでプログラミングに触れたことがないユーザーもVBAに挑戦し、習得したケースも多いかと思います。
VBAはExcel(エクセル)の機能の一部であり無料で使うことができますので、この時点で業務自動化の機運が高まってもおかしくなかったのですが、やはりその記述方法はプログラミング言語ということで、一般化するには敷居が高かったものと思われます。
なお、現在でもExcel(エクセル)単体の処理であれば、どのような高額のRPAよりもVBAが優れています。速度、カスタマイズ性、すべてにおいてVBAが凌駕しています。
<見本_VBAの記述>
Sub Splitter()
Dim chk As String
chk = Range(“A1”)
If chk <> “時間” Then
Else
Columns(“D”).Insert
Columns(“D”).Insert
Range(“D1”) = “氏名”
Range(“E1”) = “所属”
Dim myDir As String
myDir = ThisWorkbook.Path
Dim LastRow As Long
Range(“A1048576”).Select
LastRow = Selection.End(xlUp).Select
LastRow = ActiveCell.Row
RPA世代
前述のプログラミング言語、Excel(エクセル)のVBAともに、業務自動化の流行とまでは至らなかったのですが、2017年、事務作業ロボットとして国内でリリースされたRPAは、早い段階で脚光を浴びました。
以降、現在までに新聞や経済紙上で「〇〇の企業がRPAの活用により年間〇〇万時間の工数削減に成功」や、「〇〇市でRPAを導入し、大幅な業務効率化を実現」等の記事が紙面を賑わせています。
また、RPAは、Excel(エクセル)のVBAとは異なり、パソコン上で動作するすべてのアプリケーションを操作することが可能で、Web上からの情報取得も正確に行えます。
そして、決定的な違いは、プログラミング言語そのものの知識はなくても、ビジュアル的にフローを構築することで、自動化のプログラムを作成することが可能です。
人手不足や社員の高齢化、政府が発表した「DXレポート」、「働き方改革」。国内の企業を取り巻くいくつかの課題は、RPAを活用することで軽減可能なことから、より認知度が高まったのでしょう。
今回の記事のタイトルになっている「RPAは古いか」については、ここまでで説明したように、
RPAの根幹はプログラミングであるが、プログラミング自体は以前から存在していた。ただし、一般化するには敷居が高かったプログラミングを、RPAは少し身近な存在にしてくれた。
という解釈になると思います。
つまり、RPAは古くからあるコンピューター技術を、少し活用の敷居を下げた。ということです。
RPAの将来性
3つのクラス
現段階のRPAは、判断業務を行うことはできません。
手順が決まったいわゆる定型業務のみが自動化の対象です。(すべてのプログラミング言語も同様です)
ただし、ITとは日進月歩で進化をするものです。事実、RPAにも3つのクラスが定義されており、将来的により高度なテクノロジーに発達することでしょう。
下表のうち、2021年現在のRPAはクラス1に該当します。
RPAは、無限の可能性を秘めたプログラミングの世界を一般化し、さらに将来的な技術革新とも連携し、より高度な社会を形成するツールを目指しているのです。
以上のことから考えると、「RPAは古いか」というテーマは、ほとんど意義を持たない論議なのです。