わたしの感覚として、日本国内では2017年頃より、業務自動化のITツールとしてRPAが注目されるようになりました。
その後、2019年頃には、今後の労働力人口の減少という確定的な課題に対し、業務の自動化を謳うRPAはひとつの解決策として、益々、注目を浴びるようになります。
しかし、2022年現在、RPAは当初の期待を下回る状況で推移しているように思えます。
今回の記事では、「RPAはオワコンなのか」という疑問に対して、当サイトの見解を述べます。
2022年現在、RPAは当初の期待を下回る状況・・という一文については、現役RPAエンジニアであるわたしの肌感覚です(一応、根拠は記事内で紹介します)。様々な統計機関からは、RPAの導入は増加し続けているという発表もあります。
「終わりのコンテンツ」を短縮した俗語です。
RPA市場は成長産業か?
2017年頃から国内で注目を浴びるようになったRPAは、当初、年2桁の右肩上がりで成長すると予想されていました。2022年現在、RPA市場はどうなっているのでしょうか。
調査機関の発表
世界的な調査機関である「ガートナー」や国内の調査機関「矢野経済研究所」によれば、RPA市場は2020年時点でも成長を続けており、2025年まで年2桁の成長が望めるとしています。
ただし、現役RPAエンジニアのわたしからは違和感のある発表であり、2019年時点のRPAセミナーの盛況ぶりや企業からの問い合わせ件数から判断するに、RPAは2020年頃から成長は鈍化しており、一過性のブーム後のような雰囲気さえ感じます。
Google検索件数の推移(減少)
前節で述べたようなわたし個人の感覚では、実際の世間のRPAへの関心度は図れませんが、あるデータを準備しました。
下のイメージ図は「Googleトレンド」というサービスを使って、『RPA』という単語でインターネット検索された件数です。ご覧のように、『RPA』という単語で検索された件数は2019年5月をピークに、減少しています。
「RPA」という単語でインターネット検索された件数
このデータは「普及に伴って新規で調べるユーザーが減少しただけなのでは・・」という見方もできると思いますが、ICT市場調査コンサルティングのMM総研の発表によれば、2021年1月の調査時点のRPA導入率は下記の通りとなっています。
- 年商50億円以上の大・中規模企業⇒37%
- 年商50億円未満の中・小規模企業⇒10%
調査機関によっては、もっと普及率が高くなることもありますが、概ね、上記の普及率データは正しいと思います。
RPAの導入は意外に進んでいないのが現状なのです。このような低い普及率で、RPAという単語の検索率も減っているということは、関心そのものが減少しており、いわゆるブーム的なものが過ぎたと考えるほうがわたしには違和感がありません。
RPA市場は成長産業か
RPAはこれから成長するのか?
この問いに関しては、わたしには分かりません。外的要因がなければ、ブームが再燃することはほぼありませんので、このまま微増か横ばいの状態が続くと思うのですが、何らかのきっかけがあれば、また注目されることもあるでしょう。
ただし、まずは次章で説明する「RPAに関する世間的な認識違い」の弊害が除かれることが、先決と思います。
RPAは「オワコン」か?
この記事のテーマ「RPAはオワコンか」について当サイトの私見を述べます。
RPAに関する認識違い
当サイトでは、何度も説明していますが、RPAはプログラミングの知識が必要です。
多くのメディアやRPAの研修を提供している代理店等は、「RPAはプログラミングの知識がなくても使えます」といったPRをしていますが、それは完全に誤りです。
RPAでは、プログラミングコードを記述する代わりに、動作を指令するための「ブロック」を組んでいく必要があります。
<例:UiPathのワークフロー>
このブロックを組んでいく作業は、業務手順を可視化したうえで、プログラミング思考に基づいて行います。例えば、処理のくり返しの範囲や回数の定義、条件分岐の定義。それらを正確に組んでいく必要があり、一般的には、プログラミングで使う「変数」の知識も必要になります。
「RPAはプログラミングの知識がなくても使えます」といった誤ったPRによって、簡単と聞いたからRPAを導入したけど活用することが出来ずに解約した(または放置されている)企業は数多く存在し、RPA普及の大きな弊害になっているように感じます。
他にも、「RPAはプログラミングの知識が不要だから操作研修を受けるだけで使えるようになります」と謳っているRPA研修事業者もおり、益々、RPAを窮地に追いやっています。
これは「商品を売るための誇大広告である」と認識し、正しい導入を心掛けたほうがよいでしょう。
社内の人的リソース・ITリテラシーで対応できそうか?または、信頼できる外部委託先が見つかりそうか?を検討することです。間違っても、「RPAはプログラミング知識は不要だから、操作研修だけ受けて、導入してみよう!」と考えてはいけません。確実に失敗します。
RPAは全く新しいテクノロジーではない
これも世間的な勘違いですが、「RPAは最先端のテクノロジー」というPRも正確ではありません。
RPAは、プログラミングをビジュアル化したITツールであり、プログラミングへの敷居を下げたことは事実なのですが、業務自動化の環境自体は、数十年前から存在しています。
つまり、コンピューターが誕生したときから、プログラミングによる自動化は実現できていたことなのです。ちょうどパソコンにWindowsOSが搭載され、少し学習すれば誰にでもコンピューターが使えるようになったことと、本質的には似ています。
整理すると、古くから存在する少し難解な「プログラミング」という分野を使いやすくした、のがRPAです。
RPAは「オワコン」か?
RPAはプログラミングの知識が必要なITツールであり、誰でも簡単に自動化が実現できる訳ではない。を前提に本題に移ります。
RPAのベンダーのホームぺージをご覧いただければ分かるのですが、国内の名だたる大企業では、RPAを導入し今や経営に欠かせないほど活用を進めています。
RPAの正しい認識をもって、社内の業務自動化に取り組めば、事実として社内の業務効率化は大きく進むのです。
「まやかし」のITツールが、数年に渡って大企業で活用されることなど考えられません。つまり、RPAは非常に高いポテンシャルを持つITツールであり、本来、「オワコンかどうか」の議論の余地などないのです。
「プログラミングはオワコンか」という議論が存在しないように、プログラミングの敷居を実用的に下げたRPAも、しばらく「オワコン」とは無縁の分野でしょう。
ただし、「RPAというものは、プログラミングを知らなくても簡単に業務を自動化できるらしいぞ」といった短絡的なブームという意味合いでは、もう終わったのかもしれません。
これからは、RPAの本質を理解し、正しいITリテラシーを持った企業だけが活用を続け、RPAの恩恵を受けることになるでしょう。
RPAが本来の意味での「オワコン」になるとき、それは業務の概念が大きく変わり、パソコンを使った事務作業自体が無くなる、または、ITリテラシーが飛躍的に高まり、プログラミング自体が誰でも使えるような世の中になったとき、と当サイトでは考えています。
あとがき
今回は、「RPAはオワコンか?」というテーマに対して、当サイトの見解を書きました。
RPAに限らず、近年、テクノロジー分野を身近にしたツールは数多くリリースされています。業務の自動化のみに固執せず、様々なITツールの情報収集をし、企業の成長に繋げましょう。