この記事では、2021年にMicrosoftが発表した無料で使えるRPAソフトウェア「Power Automate Desktop」について説明します。
Power Automate Desktopは、どの程度の実力を秘めており、実際に会社の業務を自動化できるのか?具体的に、何ができるのか?
Websでは、Power Automate Desktopを集中的に取り上げ、連載で情報を発信していきます。第1記事目となる今回は、Power Automate Desktopの詳細機能には触れず、その概要的な内容を説明します。
当記事の後半では、Power Automate Desktopを使った短編デモ動画を掲載していますので、ご関心のある方はぜひご覧ください。
日本国内のRPA事情
RPAは、日本国内で2017年頃から流行の兆しを見せ始め、大企業を中心に様々な企業が業務の自動化に取り組みました。中々、自動化が実現できず停滞している企業も多い中、大きな成果を生み出した企業も多く存在します。
ただし、基本的に、RPAを導入するためには高額な費用が必要でした。そのため、中小企業や小規模事業主にとっては、少し手が届き辛いITツールだったといえるでしょう。
事実、国内で利用されているRPAソフトウェアのほとんどは、サブスクリプション型の料金体系をとっており、年間ライセンス料で概ね50万円から100万円程度の費用が必要になります。
一定の機能を有したRPAであれば50万円は安いほうで、相場的には100万円前後でしょう。
(年間ライセンスのため、毎年同額の費用が発生する)
ところが、2021年3月、Microsoftは、これまで提供していた同社のRPAシステム「Power Automate」の派生ツールをWindows10ユーザー向けに無料で提供することを発表しました。
実際に、無料で提供されたRPAソフトウェアの名称は「Power Automate Desktop」です
Power Automate Desktop
Microsoftについて
Microsoftは、かつて「ITの巨人」といわれWindowsを主力サービスに全世界で圧倒的な立場を築いていました。
近年は、GAFAの登場により、インターネット領域では大きくシェアを落とし、以前と比べると存在感も薄くなった印象がありますが、Microsoftは高い先見の明を持った企業です。
例えば、Excel(エクセル)に搭載されたVBA・マクロ機能は、無料で使えるにもかかわらず、強力な機能を持っています。
当時、最近のRPAで説明されているような、「社内のIT人材の育成」「企業で導入するにあたっての体制の整備」「推進体制の作り方」「リスク面」などと合わせてプロモーションしていれば、間違いなく世界の自動化ブームは10年早かったでしょう。
RPA分野においては、MicrosoftはUiPathやWinActor等の後塵を拝すことになりましたが、Power Automate Desktop次第で、情勢は変わるかもしれません。
余談ですが、同じくMicrosoftが提供しているPower BIやPower Apps等を包括したプラットフォーム「Power Platform」は、完全にDXを見据えたサービス群で、単発性のRPAソフトウェアよりも、数歩先を見ています。
Softmotiveの買収
前段として、2020年5月Microsoftはsoftmotiveという老舗のRPAベンダー会社を買収しています。
従来、softmotiveは自社で開発した「Win Automation」というRPAソフトウェアを提供しており、世界で9,000社程度の利用実績があったようです。
Microsoftは以前から、Microsoft FlowやPower AutomateというRPAシステムを提供していましたが、RPAを強化するため、Softmotiveを買収しました。
そして、2021年3月にWindows10ユーザー向けに無償で公開したRPAソフトウェアが「Power Automate Desktop」なのです。
Power Automateとの比較
前述のとおり、MicrosoftはSoftmotive社の買収以前から、Power AutomateというRPAソフトウェアを提供していましたが、Power Automateは、パソコンのデスクトップアプリを操作するためのものではなく、クラウド上で各種アプリケーションと連携して効率化を図るような方向性になっていました。
Power Automate自体も一般的な相場で比較すると、かなり低価格で提供されていましたが、正直、UiPathやWInActor等、他のRPAソフトウェアと比較するとどこか異色で、一般的な事務作業を自動化するイメージは持ち辛かったかと思います。
決して質の悪いRPAソフトウェアではなく、事務作業を通り越して、(広義の)テレワーク、モバイルワーク、大量のデータを活用する「DX」の手前に踏み込んだようなITツールという印象です。
そこで、前述のSoftmotive社の買収によって、パソコンのデスクトップの自動化を実現するためのPower Automate Desktopを完成させ、2021年3月のWIndows10ユーザーへの無償公開が実現したのです。
元々、Microsoftは全世界で広く使われているExcel(エクセル)等、Office系アプリのベンダーであり、パソコンを使った事務作業に関しては、世界No1の知見を持っているはずです。
そのMicrosoftと老舗のRPAベンダー会社の知見を融合したPower Automate Desktopは、無料とはいえ実用性は高いと思われますので、今後、かなり期待されるRPAソフトウェアであることは間違いありません。
最も注目すべき点は、これまで高額な年間ライセンス費用がネックとなり、自動化、つまりデジタル活用が進んでいなかった中小企業や小規模事業主にも波及していく点でしょう。
国内のRPAの流行から約4年。RPAは、いつでも誰でも手の届く身近な存在になったのです。
Power Automate Desktopの性能概略
実際に、Power Automate Desktopを使ったみたところ、Excel(エクセル)を操作するためのアクションや、クリック、画像認識、実際のユーザー操作のレコーディング機能など、UiPathやWinActor等でお馴染みのアクションが一通り揃っていて、近いレベルの自動化は実現できそうです。
Power Automate Desktopでは、自動化のプログラムのことを「フロー」、フローを構成する部品のことを「アクション」と呼びます。
上記のフロー画面は、UiPathやWinActorなどのRPAソフトウェアのUIと比べると、フロー図よりはリスト形式寄りで、慣れが必要かもしれません。前身であるWin AutomationのUIが色濃く残っているイメージです。
<参考~RPA毎の呼称の違い>
PowerAutomate Desktop | UiPath | WinActor | |
---|---|---|---|
プログラム名称 | フロー | ワークフロー | シナリオ |
部品名称 | アクション | アクティビティ | ノード |
今回、簡単なweb画面操作のフローを作成してみましたので、動画で紹介したいと思います。
(フローは、webレコーディング機能を使って1分~2分程度で作成しました)
<Yahoo路線情報で検索する>
- Yahoo路線情報をEgdeで開く
- ウィンドウを最大化する(UI識別)
- 出発地に「大阪」をセット
- 到着地に「東京」をセット
- 検索ボタンをクリック(UI識別)
このデモ動画は、実際の速度です(倍速処理はしていません)。Excel(エクセル)等から複数行分の値を取得するなどの複雑なフローではありませんが、パフォーマンスは良好と思います。
あとがき
Websは、小規模事業主・個人事業主をサポートする目的で設立した個人事業主です。
過剰な価格高騰を抑え、お手頃価格でサービスを提供することをモットーとしているため、お客様の効率化・デジタル化が安価で実現する今回のPower Automate Desktopは、好相性の製品です。
今後、Websのホームページ上で情報発信を続けるとともに、「Power Automate Desktopを活用するためのサポート事業」も開始する予定です。